Half-blood―混血?それとも半純血?

なんかいろいろなところで見かける「『混血』と『半純血』の違いって何?」っていう疑問。どちらも”half-blood”なんです。だから「混血」と「半純血」に違いなんかないんです!適当なこと言うな!(笑)

「混血」も「半純血」も、結論から言うと一緒

いわゆる「知恵袋」系のサイトでも「『混血』と『半純血』は何が違うのか」みたいな質問がありますが、結論から言うとどちらも同じです。つまりハリー・ポッターの世界でいうところの、「純血」でもなければ「マグル生まれ」でもない、祖先にマグルが少なくとも一人はいる魔法族のことを指す言葉です。

ハリー・ポッターを最後まで読んだ人なら、主人公のハリーは最終的に親友ロンの妹であるジニーと結婚し、3人の子どもに恵まれていることをご存知かと思います。

ハリーの両親のことを考えてみると、父親ジェームズは純血、母親のリリーはマグル生まれの魔女です。つまりハリー自身は英語でいう”half-blood”、手持ちの辞書を引けばこれは「混血」という意味です。しかし「半純血」と言っても特に違和感を覚えないと思います。なぜってハリーは片親が純血で、片親が完全にマグルの家系の人物ですからね。

さて、ここでハリーの子どもたちのことを考えてみます。ハリーの妻ジニーは「純血」です。当然ジニーの両親、アーサーとモリーも「純血」です。そうするとハリーの子どもたち3人、ジェームズ・シリウス・ポッター、アルバス・セブルス・ポッター、リリー・ルーナ・ポッターの祖父母4人のうち3人は純血で、1人がマグル生まれということになります。

ではハリーとジニーの子どもたち3人は「混血」でしょうか、「半純血」でしょうか。3人とも”half-blood”です。「混血」と呼んでも「半純血」と呼んでも構わないのです。「四分の三純血」とか呼ばないのです。

5巻までは「混血」、6巻からは「半純血」

見出しの通り、「混血」と「半純血」、どちらの邦訳も元を正せば”half-blood”という言葉です。5巻までは”half-blood”という言葉は「混血」と訳されており、6巻では「半純血」と訳されています。

6巻の原題は”Harry Potter and the Half-Blood Prince”で、邦訳の発売前の仮題は『ハリー・ポッターと混血のプリンス』でした。発売前に「謎のプリンス」に変更されたのは、「混血」という言葉が差別にあたるからではないか、というような話をちらほら聞きます。

そして問題の”Half-Blood Prince”は、本文中では「半純血のプリンス」と訳されています。セブルス・スネイプが自分で自分のことを「謎のプリンス」と呼ぶのもなんだか変な感じがしますし(いや、厨二病こじらせてそういう風に自分のことを呼んでいてもいいんですけどね)、何より、「謎のプリンス」にしてしまうと、プリンスの正体がわかったときのハリー、ロン、ハーマイオニーの反応と照らし合わせて意味が通じなくなってしまいます。

6巻を読むとわかりますが、ハーマイオニーは図書館で古い『日刊予言者新聞』を調べ、アイリーン・プリンスという魔女がマグルのトビアス・スネイプと結婚したという記事、その1年後に二人が子どもを授かったという記事も見つけたことをハリーとロンに話します。ハリーはそれを聞いて、スネイプは純血の人々から認められたくて純血の家系を誇張したのだろうと推測しています。

だから、「混血」=「半純血」なの!

さて、ここまで読んでいただければ「混血」という言葉と「半純血」という邦訳がまったく同じ”half-blood”という言葉を指していることはおわかりいただけたかと思います。

「半純血」という言葉は、「純血」と「マグル生まれ」の子ども、あるいは「純血」と「マグル」の子どもだけを指すわけではありません。ハリーやジニーの子どもたちのように、明らかに純血の祖先が半数以上でも「半純血」です(だって「混血」だもの)。反対に、マグルやマグル生まれの祖先が半数以上でも「半純血」となります(だって要するに「混血」だもの)。

“Half”って、「半分」って意味じゃないの?

ごもっともな質問だと思います。っていうか私も調べました。でもHarry Potter Wikiaなどを見ていると、純血の先祖がピッタリ半数じゃなくても”half-blood”って使うんです。そこでいろいろと調べてみました。

“half”と言うのは、もちろん英語で「半分」という意味があります。”an hour and a half”と言えば、「1時間とその半分」なので「1時間半」という意味です。”half-brother”や”half-sister”は、片親が違う兄弟や姉妹のことを指すので、やはり「ぴったり半分」の意味で使われていると考えていいと思います。

一方で、いわば「0でも1でもない」、「中途半端」のような意味で使われている”half”があります。例えば”half-baked”。これは「生焼け」という意味の言葉です。「完全に焼けたわけでもなく、全く焼いていないわけでもない」わけですから、”half”が「1でも0でもない」という意味で使われていることがわかります。「生焼け」という意味から派生して、計画などが「不十分な」、考えが「生半可な」という意味もあります。

ですから”half-blood”の”half”は「ぴったり半分」という意味ではなく、「1でも0でもない」という意味で捉えるとしっくりくるかと思います。

「ハーフ」は和製英語

もう完全に蛇足ではありますが、普段使われている「ハーフ」という言葉は和製英語です。この場合の「ハーフ」はやはり「ぴったり半分」の方の意味で、半分外国人の血を引いている、ということを指しているのでしょう。もう半分は?と聞かなくても、当然片親は日本人だという暗黙の了解のもとに使われる言葉です。これは「クォーター」の例を考えるとより明確で、1/4は外国人と言えば、「残りの3/4は日本人」という暗黙の了解があります。

こう見てみると、日本語の中で使われている「ハーフ」の表現が英語圏では通じにくいことがわかると思います。例えば、アメリカは移民の国ですから、様々な民族的背景を持った人々が住んでいます。アメリカ人が「俺、『ハーフ』なんだ」といったところで、「残り半分」を特定することが難しいのです。アイルランド系かもしれないし、中国系かもしれない。日本ではいわゆる「日本人」を基準とするけれど、「アメリカ人」には多様な民族背景があって、そういう「基準」がありえない。

イギリスならイングランド系、スコットランド系、ウェールズ系、それにアイルランド系がいるし、イギリスにだって旧植民地からたくさんの移民が入ってきている。(チョウ・チャン役のケイティー・リューングはスコットランド生まれの香港系イギリス人だし…)オーストラリアも移民の国。ニュージーランドだってそう。やっぱり「ハーフ」って表現に無理がありますよね。

私の印象だと、英語で人物のルーツについて表現するときは「○○系、××系、△△系の血を引く」とか、具体的に「祖母が××人」みたいな表現が多い気がします。もっと堅苦しい表現をする時は、”multiracial”の”multi”みたいに、「多い」という表現を使って具体的な割合を表さないとか。

(あ、別に私は「ハーフ」という呼称をやめよう!とかそういう運動家ではないです。辿れる範囲の先祖に日本人じゃない人いなさそうだし。単に「混血or半純血」問題を考えていたら、ふと気づいたまでなのです。)

改めて”Half-Blood Prince”を考えてみると…

別に「半純血のプリンス」セブルス・スネイプの片親が「純血」である必要はなくなります。「混血」は祖先に一人でも魔法族がいればいいんですから。つまりセブルスの母親アイリーン・プリンスが「純血」とは限らない。6巻の中でスネイプの母親が純血だとハリーが言っているけれど、「スネイプは純血の血筋だけを誇張した」っていうハリーの推測の一部に過ぎないわけです。

もっとも、特別突拍子もない考えではないですが。リリーのことを「穢れた血」呼ばわりしたくらいですからね。

“Half-Blood Prince”と名乗った理由をスネイプ本人が話してくれたわけじゃないからなあ……

ポッターモアに載っている「聖28一族」(間違いなく純血だと認定された一族の一覧)にも、「プリンス」は載っていなかったし…(同じく「ポッター」も載っていなかったんですけど……)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。