分霊箱(ホークラックス)

eagle

人間の魂を分断し、その一部を隠し入れたものです。闇の魔術の中でも「最も邪悪な発明」といわれています。分断した魂の一部を体の外に隠しておけば、体が破滅しても死ぬことはありません。

基本データまとめ

名前

分霊箱/ホークラックス(Horcrux)

作ったことがわかっている人物
作られた時代
  • 古代ギリシャ
  • 1943年~1994年ころ、イギリス
使いみち

分断した魂の一部を収めておき、死ぬのを防ぐ

起源

歴史上初めて分霊箱を作った人物として知られるのは、古代ギリシャの「腐ったハーポ」です。他に分霊箱を作ったことがわかっているのは、20世紀のイギリスの闇の魔法使い、ヴォルデモート卿です。複数の分霊箱を作ったことがわかっているのは、世界でおそらくヴォルデモートだけです。

分霊箱はその性質から忌むべきものとされ、魔法界でこの魔術について知る者は多くありません。ホグワーツ魔法魔術学校では分霊箱についての話題は禁じられており、特にアルバス・ダンブルドアは厳しい態度を取っていました。

ホークラックス、魔法の中で最も邪悪なる発明なり。我らはそを語りもせず、説きもせぬ

――『もっとも邪悪なる魔法』の序文 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第18章

闇の魔術に関する書籍ですら、分霊箱について記載があるものはほとんどありません。『深い闇の秘術』が唯一、分霊箱の作り方が具体的に書いてあることがわかっている書籍です。ダンブルドアはこの書籍をホグワーツの図書室から取り除いていました。しかしおそらくそれはダンブルドアが校長になってからのことで、ヴォルデモートは学生時代にこの書籍から情報を得ていたと考えられます。

学生時代のヴォルデモート(トム・リドル)はこの書籍からでも「分霊箱を複数作った場合の情報」は得られなかったらしく、ホラス・スラグホーンに意見を求めました。

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特徴

作り方

魂は本来完全な一体であるはずのもので、これを分断するのは暴力行為で、自然に逆らうものです。悪の極みによる行為、すなわち殺人を犯すことによって魂を分断します。引き裂かれた魂の一部分は、ある呪文によって、自身の肉体以外の物体に閉じ込めることができます。

性質

分霊箱は、人がその魂の一部を隠すために用いるものです。魂を分断し、肉体から離して別なものに収めておくと、肉体が攻撃されたり破滅したりしても、死ぬことはありません。分断された魂の一部は滅びず、地上に残るからです。

分霊箱を作成した人物の肉体が破壊されると、肉体に宿っていた魂は「ゴーストの端くれにも満たない存在」として地上に残ります。この状態から肉体を取り戻す方法は存在し、ヴォルデモートは1995年6月、「父親の骨、下僕の肉、敵の血」を使って肉体を取り戻しました。

動物を含め、どんなものでも分霊箱にすることができます。しかし破壊される可能性を考えると、それ自身が考えたり動いたりするものに魂の一部を収めるのは賢明なこととはいえません。

分断された魂は非常に不安定なもので、分霊箱それ自体は「人間とは完全に逆」の性質です。人間はたとえ肉体が破壊されても魂は無傷で残りますが、分霊箱は破壊されると、その中に収められていた魂の一部はもはや存在することができなくなります。魂の断片は分霊箱なしでは存在することができません。

誰かが分霊箱に感情的に近づきすぎると、分霊箱の中の魂の断片はその人物に出入りできるようになります。ジニー・ウィーズリーはホグワーツ1年生のとき、分霊箱だったトム・リドルの日記に自身の悩みを打ち明けてしまい、極端に無防備になりました。トム・リドルの日記に収められていたトム(後のヴォルデモート)の魂がジニーに取り憑き、ジニーは秘密の部屋を開けてしまいました。

分断された魂を元に戻すことは不可能ではありません。自分のしたことを心から悔いる「良心の呵責」によって分断した魂を戻すことはできますが、あまりの痛みに自らを滅ぼす可能性があると指摘があります。

破壊方法

分霊箱を破壊するには、分霊箱がひとりでに回復できないほど強い破壊力を持ったものを使う必要があります。分霊箱を引き裂いたり、打ち砕いたり、押しつぶしたりするだけでは効果はなく、魔法で回復することができない状態にまで破壊する必要があります。

こうした性質を持つもので、わかっているのは次の二つです。

  • バジリスクの毒
  • 悪霊の火

また、ホグワーツ魔法魔術学校に保管されているグリフィンドールの剣は、1993年にハリー・ポッターが秘密の部屋に棲むバジリスクを倒したときに使ったものです。グリフィンドールの剣はゴブリン製で、ゴブリンの鍛えたものは自らを強化する物質を吸収します。グリフィンドールの剣はバジリスクの毒を吸収していたため、のちにヴォルデモートの分霊箱を破壊するのに使われました。

ヴォルデモート卿の分霊箱

ヴォルデモートは魔法数字の7は一番強い数であると信じ、自分の霊を7つに分断することにこだわりました。アルバス・ダンブルドアによれば、ヴォルデモートは「勝利のトロフィー」を集めたがり、強力な魔法の歴史を持ったものを好んだといいます。

分断された魂の断片ひとつはヴォルデモート自身の肉体に宿るため、ヴォルデモートが(意図して)作った分霊箱は6つです。

トム・リドルの日記

分霊箱の作成時期

1943年6月

隠し場所

ルシウス・マルフォイが所有していたが、1992年にジニー・ウィーズリーの持ち物に紛れ込まされた。

最終的にハリー・ポッターが「嘆きのマートル」のトイレで発見した。

魂を分断した殺人

バジリスクを使った、マートル・ワレンの殺害

殺害場所

ホグワーツ城の女子トイレ

分霊箱の破壊時期

1993年5月

破壊した人物
破壊した方法

秘密の部屋内で、バジリスクの牙を突き刺した。

マールヴォロ・ゴーントの指輪

分霊箱の作成時期

1943年夏

隠し場所

リトル・ハングルトン、ゴーントの家

魂を分断した殺人

モーフィン・ゴーントの杖で、トム・リドル・シニアを殺害

殺害場所

リトル・ハングルトン、リドルの館

分霊箱の破壊時期

1996年7月

破壊した方法

(バジリスクの毒を含んだ)グリフィンドールの剣で破壊した。

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スリザリンのロケット

分霊箱の作成時期

1946年ころ~1979年

隠し場所

ヴォルデモートが孤児院にいたころ、遠足で訪れた洞窟

のちにグリモールド・プレイス12番地のブラック家の館に持ち出された。それをマンダンガス・フレッチャーが盗み出し、のちにドローレス・アンブリッジに賄賂として渡された。

魂を分断した殺人

マグル(詳細不明)

殺害場所

不明

分霊箱の破壊時期

1997年12月

破壊した人物
破壊した方法

(バジリスクの毒を含んだ)グリフィンドールの剣で突き刺した。

ハッフルパフのカップ

分霊箱の作成時期

1946年以降

隠し場所

グリンゴッツ魔法銀行、レストレンジ家の金庫

魂を分断した殺人

ヘプジバ・スミス

殺害場所

ヘプジバ・スミスの自宅

分霊箱の破壊時期

1998年5月2日、ホグワーツの戦い

破壊した方法

バジリスクの牙を突き刺して破壊した。

レイブンクローの髪飾り

分霊箱の作成時期

1946年以降

隠し場所

ホグワーツ城、必要の部屋

魂を分断した殺人

アルバニアの農民を殺害

殺害場所

アルバニア

分霊箱の破壊時期

1998年5月2日、ホグワーツの戦い

破壊した人物

ビンセント・クラッブ(ただし意図したものではない)

破壊した方法

悪霊の火

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ナギニ

分霊箱の作成時期

1994年夏

隠し場所

ハッフルパフのカップが盗み出されたことがわかってからは、ヴォルデモートのそばにいた。

魂を分断した殺人

バーサ・ジョーキンズの殺害

殺害場所

アルバニア

分霊箱の破壊時期

1998年5月2日、ホグワーツの戦い

破壊した人物
破壊した方法

(バジリスクの牙を含んだ)グリフィンドールの剣で首を切り落とした。

ハリー・ポッター

「きみはのう、ハリー、あの者が期せずして作ってしまった、七つ目の分霊箱だったのじゃ。あの者は、自らの魂を非常に不安定なものにしてしもうたので、きみのご両親を殺害し、幼子までも殺そうという言語に絶する悪行を為したとき、魂が砕けた。[…]犠牲になるはずだったきみに、生き残ったきみに、あの者の一部が結びついて残されたのじゃ」

――アルバス・ダンブルドア 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章

アルバス・ダンブルドアによれば、ハリー・ポッターヴォルデモートが意図せずして作ってしまった、事実7つ目の分霊箱でした。1981年のハロウィーン、ハリーを殺そうとした死の呪文はハリーの母リリーが遺した護りの魔法で跳ね返されました。ヴォルデモートはこのとき肉体を失い、魂の一部がハリーに引っかかります。この魂の一部が原因でハリーは蛇語を話したり、ヴォルデモートの心の中を覗いたりすることができていました。

登場・言及箇所

  • 『ハリー・ポッターと賢者の石』
  • 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
  • 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
  • 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
  • 『ハリー・ポッターと死の秘宝』
  • 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
  • 『ハリー・ポッターと死の秘宝』
  • 『吟遊詩人ビードルの物語』
  • J.K. ローリング公式サイト
  • 『ハリー・ポッターと呪いの子』
  • ポッターモア(現:Wizarding World)
『ハリー・ポッター』シリーズ最終巻
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