アンドロメダ・トンクス(旧姓ブラック)は純血の名家ブラック家の三姉妹の次女であり、純血主義を根幹に置く一族の家訓を拒否してマグル生まれの魔法使いテッド・トンクスと結婚したことでブラック家の家系図から名前を焼き消された人物です。娘ニンファドーラ(トンクス)の母親であり、第二次魔法戦争で夫テッドと娘ニンファドーラを相次いで失ったのちも、孫テッド(テディ)・ルーピンの養育を一身に引き受け、孫の名付け親ハリー・ポッターとともに戦後を生き抜きました。

人物情報

名前: アンドロメダ・トンクス(Andromeda Tonks)
旧姓: アンドロメダ・ブラック(Andromeda Black)
生まれ: 1953年頃(推定。姉ベラトリックス・レストレンジが1951年生まれ、妹ナルシッサ・マルフォイが推定1955年頃生まれであることから、その中間の生まれと推定されますが、正確な年月日は公式資料に明記されておらず、定かではありません)
性別: 女性
血統: 純血(ブラック家出身)
種: 人間・魔法族

家族

来歴

生い立ち

アンドロメダ・ブラックは純血の旧家ブラック家に生まれました。ベラトリックスナルシッサの間に生まれた次女であり(HP5-06)、ブラック家は「Toujours Pur(常に純粋に)」を家訓とする純血至上主義の一族でした。家系図にはブラック家の歴代の人物の名前が並んでいますが、純血主義に背いた者の名は炎で焼き消されています(HP5-06)。

ブラック家に生まれた子どもたちは星や星座の名を冠する慣習があり(HP5-06)、アンドロメダもまたその一人です。姉はベラトリックス(Bellatrix)、妹はナルシッサ(Narcissa)であり、いとこにはシリウス(Sirius)やレグルス(Regulus)などがいます。

アンドロメダがいつ、どのような経緯でブラック家の純血主義に疑問を抱くようになったかは原作に描かれておらず、定かではありません。しかし彼女が最終的に一族の価値観を拒絶し、マグル生まれのテッド・トンクスを選んだという事実は、その選択が家族との絶縁というきわめて大きな代償を伴うものであることを知った上でのものであったと考えられます。

ホグワーツ時代

アンドロメダのホグワーツ時代の詳細は原作にほとんど描かれていません。ブラック家の者はほぼ例外なくスリザリン寮に組み分けられてきた歴史がありますが(HP5-06)、アンドロメダ自身がどの寮に所属したかは公式資料に明記されておらず、定かではありません。

ホグワーツ在学中にテッド・トンクスと出会ったと考えられますが、二人の馴れ初めや交際の経緯は原作に描かれていません。

テッドとの結婚・ブラック家との絶縁

アンドロメダはマグル生まれの魔法使いテッド・トンクスと結婚しました。この選択はブラック家にとって一族の誇りへの裏切りとみなされ、アンドロメダの名前は家系図から焼き消されました(HP5-06)。グリモールド・プレイス12番地の壁に掲げられたブラック家の家系図を前に、シリウス・ブラックはハリーに次のように語っています。

「アンドロメダの跡(あと)は焼き消してある。テッド・トンクスというマグル生まれと結婚したからだ」

(HP5-06、意訳)

この決断により、アンドロメダは姉ベラトリックス・レストレンジとも妹ナルシッサ・マルフォイとも長きにわたって没交渉の状態が続くことになりました(HP5、HP7)。しかしアンドロメダはその選択を後悔することなく、テッド・トンクスとともに家庭を築いていきました。

結婚後、1973年頃に娘ニンファドーラが生まれました(推定)。ニンファドーラは後に闇祓いとなり、不死鳥の騎士団の一員として第二次魔法戦争を戦うことになります(HP5-03)。

第二次魔法戦争

第二次魔法戦争の期間、アンドロメダは不死鳥の騎士団には直接加わっていないと考えられますが、娘ニンファドーラが騎士団員として最前線に立ち、夫テッド・トンクスはマグル生まれとして迫害の対象となりました(HP7)。

1997年に魔法省がヴォルデモート側に掌握されると、マグル生まれ登録委員会が設置され、マグル生まれの魔法使いたちは逮捕・尋問の対象とされました。夫テッドは魔法省への出頭を拒み逃亡生活を余儀なくされ、やがて死喰い人に捕縛されて殺害されました(HP7-22)。夫の死を知ったのは、ラジオ放送「ポッターウォッチ(Potterwatch)」でその名が読み上げられたときであったと考えられます(HP7-22)。

1997年7月、「七人のポッター作戦」においてハリーがプリベット通りの4番地を離れた際、ハリーとハグリッドは負傷した状態でトンクス家に到着しました(HP7-05)。このとき、玄関口に立ったアンドロメダを見たハリーは、その容貌が姉ベラトリックス・レストレンジに酷似していることから一瞬で杖を構えかけました。この場面がアンドロメダ本人の原作初登場です。

ホグワーツの戦い

1998年5月2日のホグワーツの戦いに先立つ時期、娘ニンファドーラ・トンクスは生後まもない息子テッドをアンドロメダに預け、夫リーマス・ルーピンとともに戦場へ向かいました(HP7-33)。

ホグワーツの戦いでは娘ニンファドーラと婿リーマス・ルーピンが同日に命を落とし(HP7-33)、アンドロメダは短期間のうちに夫・娘・婿を失いました。それでも彼女は生後数週間の孫テッドを抱え、その養育を引き受けました。

戦後

ホグワーツの戦いの後、アンドロメダは深い喪失の中でありながら孫テッド・ルーピン(テディ)の主たる養育者となりました(HP7エピローグ、PM)。ポッターモアによれば、アンドロメダと孫テディの名付け親であるハリー・ポッターはともにテディを見守る存在として戦後の人生を歩みました(PM)。ハリーはテディを頻繁に自宅の夕食に招くなど積極的に関わり続けたとされています(JKR、Open Book Tour 2007年)。

夫テッド、娘ニンファドーラ、婿リーマスというかけがえのない三人を失いながらも、孫テッドを育てたアンドロメダの姿は、戦争の傷跡の中で次の世代へと命をつないだ人物として原作を締めくくる一つの柱となっています。

外見

アンドロメダの外見について最も印象的な描写は、HP7-05においてハリーが彼女を姉ベラトリックス・レストレンジと見間違える場面です。ハリーは玄関口に立つ女性の長い黒髪と顔立ちを見て一瞬でベラトリックスと思い込み、杖に手をかけかけましたが、それが別人であることに気づきました(HP7-05)。

戸口に立っていた女性は長い黒髪をしていた。ハリーは一瞬、ベラトリックス・レストレンジだと思い込み、咄嗟に杖へ手を伸ばした。そのとき自分の間違いに気づいた。この女性はもっと年上で、ベラトリックスよりも疲れを帯びた顔つきをしていたが、姉妹であることは一目で分かった。

(HP7-05、意訳)

この描写から、アンドロメダはベラトリックスと同様に長い黒髪と整った顔立ちを持ちながら、姉とは異なる穏やかさと年齢を重ねた風情を纏った外見であることが分かります。純血の名家ブラック家の出自らしい気品を保ちながら、戦争と喪失を経た人物の表情がそこに重なっています。

性格・人物像

アンドロメダの性格を直接描写する場面は原作に多くはありませんが、その人生の選択そのものが彼女の人物像を雄弁に語っています。

ブラック家に生まれながら純血主義を拒否し、マグル生まれのテッド・トンクスとの結婚を選んだことは、一族の家系図から名前を焼き消され、姉妹との断絶を招く覚悟の上での行動でした。ブラック家の純血主義に反抗した点では、いとこのシリウス・ブラックも同様の立場をとりましたが(HP5-06)、シリウスはグリフィンドールへの組み分けという形でその違いを示したのに対し、アンドロメダは「マグル生まれの人を愛して結婚する」という形で純血主義への拒絶を実践しました。

娘ニンファドーラが体現した「出自ではなくその人そのものを見る」という価値観(HP6-30)は、アンドロメダとテッドの二人が家庭の中で育んだものと考えられます。狼人間のリーマス・ルーピンを一切の躊躇なく娘婿として受け入れたことは、その価値観が言葉だけでなく行動に根ざしていたことを示しています(推定。原作に直接の描写はありません)。

アンドロメダの強さは、喪失を経てもなお孫を育て続けた事実にも表れています。夫・娘・婿を短期間に失いながら、生後数週間の孫テッドの養育を引き受けたその姿には、絶望の中でも次の世代のために立ち続ける静かな意志が読み取れます。

一方で、アンドロメダが「純血主義への拒絶」をどのように内面化していたかは原作に描かれておらず、ブラック家で育った幼少期がどのような影響を与えたかは定かではありません。

人間関係

アンドロメダにとって最も深い絆の一つは娘ニンファドーラとの関係です。ニンファドーラ(トンクス)が「ニンファドーラ」という名前を「母親がつけた最悪な名前」と公言していたことは(HP5-03)、母娘の間の親密さとともに、アンドロメダの存在を間接的に示すエピソードです。

ニンファドーラはホグワーツの戦い(1998年5月2日)で命を落とし、アンドロメダは娘の死を経験しました(HP7-33)。娘ニンファドーラがアンドロメダの価値観――出自ではなく人そのものを見ること――を体現した人物であっただけに、その喪失は一層深いものであったと考えられます。

アンドロメダにとって、テッド・トンクスとの結婚はブラック家の家系図から名前を焼き消されるという代償を払って選んだ関係でした(HP5-06)。テッドはマグル生まれであり、ブラック家の純血主義においては差別の対象とされる存在でしたが、アンドロメダはその事実を理由に愛することをやめませんでした。

テッドは第二次魔法戦争中、マグル生まれ登録委員会による迫害を逃れて逃亡生活に入りましたが、やがて死喰い人に捕縛されて殺害されました(HP7-22)。テッドとアンドロメダの関係は、差別と偏見に抗って人を愛することを選んだ物語の始点として、トンクス家三世代にわたる物語の礎をなしています。

ホグワーツの戦い後、アンドロメダは生後数週間の孫テッドの主たる養育者となりました(HP7エピローグ、PM)。夫・娘・婿を相次いで失った深い喪失の中で、孫の養育を一身に引き受けたアンドロメダの存在なくして、テディの育ちは語れません。

ポッターモアによれば、アンドロメダはテディの名付け親ハリー・ポッターとともにテディを見守りながら戦後の人生を歩みました(PM)。テディにとってアンドロメダは事実上の親代わりであり、両親を知らずに育つ孫のために、家族の記憶と愛情を伝え続けた人物です。

三姉妹の長女ベラトリックス・レストレンジは、ヴォルデモートの最も忠実な死喰い人であり、純血主義を血肉化した人物です(HP5、HP7)。アンドロメダがテッドと結婚してブラック家の家系図から名前を焼き消された時点から、姉妹の関係は完全に断絶したと考えられます(HP5-06)。

アンドロメダとベラトリックスは容貌が酷似しており(HP7-05)、同じ血から生まれた二人がまったく異なる価値観の道を歩んだという事実は際立った対比をなしています。ベラトリックスはホグワーツの戦いでアンドロメダの娘ニンファドーラ・トンクスを殺害しており(JKR)、実の叔母が姪の命を奪うという悲劇がアンドロメダに降りかかることになりました。

三姉妹の末妹ナルシッサ・マルフォイはマルフォイ家に嫁いでいますが(HP4以降)、アンドロメダがテッドと結婚して以降、ナルシッサとの関係もほぼ没交渉であったと考えられます。詳細は原作に描かれておらず、定かではありません。

第二次魔法戦争後のアンドロメダとナルシッサの関係については公式資料に明確な記述がなく、二人が和解したか否かも不明です。

シリウス・ブラックはブラック家の嫡男でありながら純血主義を拒絶した人物であり(HP5-06)、その点でアンドロメダと共通した立場にいました。シリウスはアンドロメダの名が家系図から焼き消されていることをハリーに淡々と告げており(HP5-06)、二人の間に親戚としてどのような感情的なつながりがあったかは原作に明記されていません。いとこ同士として同時代にホグワーツに在学した可能性は考えられますが、定かではありません。

ハリーと直接対面するのはHP7-05が初めてです。玄関口で「ベラトリックスに似た女性」として現れたアンドロメダとハリーの出会いは緊張した瞬間でしたが(HP7-05)、やがて二人は孫テッドを通じた深いつながりで結ばれていきました。

ハリーがテディ・ルーピンの名付け親を引き受けたこと(HP7-25)により、アンドロメダとハリーは共同でテディを見守る存在となりました。ポッターモアによれば、二人はそれぞれの悲しみを抱えながらもテディの養育を支え合い、戦後の人生を歩みました(PM)。

名前の由来

「アンドロメダ(Andromeda)」はギリシャ神話の王女の名であり、「人の支配者」または「男を支配する者」という意味を持つとされます(ギリシャ語の aner「男」+ medon「支配者」に由来)。神話のアンドロメダは海の怪物への生け贄として岩に縛り付けられ、英雄ペルセウスに救われた姫君として知られます。また、夜空の星座アンドロメダ座およびアンドロメダ銀河の名の由来でもあります。

ブラック家では子どもたちに星や星座にちなんだ名前をつける慣習があります(HP5-06)。姉ベラトリックス(Bellatrix)はオリオン座の一等星、いとこのシリウス(Sirius)は大犬座の一等星、レグルス(Regulus)はしし座の一等星にそれぞれ由来しており、アンドロメダも星座・銀河に由来する命名です。

J.K.ローリングがブラック家の人物に天文学的な名前をつけたことは、その家系が「古く、高貴で、穢れなき」を自負する純血主義の権化として設計されていることと重なっています。その一族の中でアンドロメダが純血主義を拒絶したという物語は、星の名を持ちながら「家の呪縛」から離れた人物として際立っています。

J.K.ローリングのコメント

I wanted to kill parents. I wanted there to be an orphan. ...Teddy has his grandmother and he's got Harry. He's got a lot more than Harry ever had.

(私は親を死なせたかった。孤児を生み出したかった。……でも、テッドには祖母がいて、ハリーがいる。ハリーがかつて持っていたものよりずっと多くのものが彼にはある。)

J.K.ローリング、Open Book Tour(2007年)

ローリングはテディの状況をハリーの孤独と意識的に対比させており、「祖母」として孫の育ちを支えるアンドロメダの存在が、この対比において不可欠な役割を担っていることが分かります。アンドロメダが登場するのは原作全体の中で限られた場面に過ぎませんが、ローリングの設計においては戦後の世代をつなぐ要として明確に位置づけられていたと言えます。

舞台裏

年表

年表

1953年頃

  • アンドロメダ・ブラック誕生(推定。正確な年月日は不明)

1960年代前半頃

1968年頃

  • ホグワーツ卒業(推定)

1970年代初頭頃

1973年頃

  • 娘ニンファドーラ・トンクス誕生(推定)

1997年

1997年7月

1997年末〜1998年初頭(推定)

  • 夫テッドが死喰い人に捕縛・殺害される(HP7-22)

1998年4月

  • 孫テッド・リーマス・ルーピン(テディ)誕生(HP7-25)
  • 娘ニンファドーラが生後まもない孫をアンドロメダに預けて戦場へ向かう

1998年5月2日

1998年以降

登場・言及箇所