ベラトリックス・レストレンジ(旧姓ブラック)は純血の名家ブラック家の三姉妹の長女であり、ヴォルデモート卿の最も忠実な死喰い人として知られる人物です。フランク・ロングボトムとアリス・ロングボトムを磔の呪文(クルーシオ)で廃人同然にした罪でアズカバンに収監されましたが、第二次魔法戦争の開戦と前後して脱獄し、神秘部の戦いではいとこのシリウス・ブラックを殺害しました。1998年5月2日のホグワーツの戦いにおいてモリー・ウィーズリーとの一騎打ちで命を落とし、ヴォルデモートとの間に秘密の娘デルフィーニをもうけていたことが後に明かされています(CC)。

人物情報

名前: ベラトリックス・レストレンジ(Bellatrix Lestrange)
旧姓: ベラトリックス・ブラック(Bellatrix Black)
生まれ: 1951年頃(推定。妹アンドロメダ・トンクスが1953年頃生まれとされることから、その二歳前後上の生まれと推定されますが、正確な年月日は公式資料に明記されておらず、定かではありません)
死亡: 1998年5月2日、ホグワーツの戦いにて
性別: 女性
血統: 純血(ブラック家出身)
種: 人間・魔法族

魔法特性

杖: ウォールナット(胡桃)、ドラゴンの心臓の琴線、12と3/4インチ、非常に頑固(unyielding)(ポッターモア)
守護霊: 不明(公式資料に記述なし)
ボガート: 不明(公式資料に記述なし)
その他の能力: 閉心術(オクルメンシー)、ほうきなしの飛行(PM)

所属

出身校: ホグワーツ魔法魔術学校スリザリン寮
団体: 死喰い人(ヴォルデモートの最側近)
職業: 死喰い人

家族

来歴

生い立ち

ベラトリックス・ブラックは純血の旧家ブラック家に生まれました。「Toujours Pur(常に純粋に)」を家訓とし、純血至上主義を一族の根幹に置く名家の長女として育ちました(HP5-06)。ブラック家では子どもたちに星や星座にちなんだ名前をつける慣習があり(HP5-06)、ベラトリックス(Bellatrix)もオリオン座の星の名に由来します。妹にはアンドロメダ(次女)とナルシッサ(三女)がいます。

ブラック家の家系図には純血主義に背いた者の名が炎で焼き消される慣習があります(HP5-06)。ベラトリックスはこの家訓を生涯にわたって信奉し、一族の純血主義を完全に内面化した人物でした。妹アンドロメダがマグル生まれのテッド・トンクスと結婚して家系図から名前を焼き消された際、ベラトリックスはこれを一族への裏切りとみなし、以降アンドロメダとの関係を断絶したと考えられます(HP5-06)。

ホグワーツ時代

ベラトリックスのホグワーツ時代の詳細は原作にほとんど描かれていません。ブラック家の者はほぼ例外なくスリザリン寮に組み分けられており(HP5-06)、ベラトリックスもスリザリン寮に属したと考えられます。彼女がいつ、どのような経緯でヴォルデモートへの傾倒を深めていったかは原作に描かれておらず、定かではありません。

第一次魔法戦争・死喰い人への入信

1970年代から80年代初頭にかけての第一次魔法戦争において、ベラトリックスはヴォルデモートの最も熱烈な死喰い人の一人となりました。この時期にロドルファス・レストレンジと結婚し、ブラックからレストレンジの姓を名乗るようになりました。夫ロドルファスおよびその兄弟ラバスタンと行動をともにし、ヴォルデモートの側近として第一次魔法戦争を戦いました。

1981年10月31日、ヴォルデモートがゴドリックの谷でハリー・ポッターを倒そうとして力を失い、第一次魔法戦争は終息しました。しかしベラトリックスはヴォルデモートが死んだとは信じず、その後も主人の復活を確信して行動しました。

ヴォルデモートの失踪から程なく、ベラトリックスは夫ロドルファス、義兄弟ラバスタン、バーティ・クラウチ・ジュニアとともに闇祓いフランク・ロングボトムとその妻アリス・ロングボトムを拘束し、磔の呪文(クルーシオ)でヴォルデモートの行方を吐かせようと拷問しました(HP4-30)。拷問はヴォルデモートの所在を明かすためという口実のもとに長時間にわたって行われ、フランクとアリスは廃人同然の精神的崩壊状態に陥り、聖マンゴ魔法疾患傷害病院に長期入院することになりました(HP4-30)。

この行為により、ベラトリックスたちは魔法省によって逮捕・裁判にかけられました。HP4-30においてハリーがペンシーブでこの裁判の記憶を目撃したとき、ベラトリックスは傍聴席から罵倒されながらも、服従や悔悟の様子をまったく見せませんでした。

「闇の帝王はまた立ち上がるぞ、クラウチ!私たちをアズカバンに送れ。待てばいい!帝王は必ずや復活し、私たちのもとに来てくださる。帝王のほかの追随者たちを超えてお報いくださるだろう!忠実だったのは私たちだけ!帝王を探そうとしたのも私たちだけ!」

(HP4-30、意訳。裁判の場でのベラトリックスの発言)

この発言は、ベラトリックスのヴォルデモートへの狂信的な忠誠心を端的に示しています。魔法大臣バーテミウス・クラウチによって終身アズカバン行きの判決が下されました。

アズカバン収監(1982年頃〜1996年)

アズカバンに収監されたのちも、ベラトリックスはヴォルデモートへの信念を失いませんでした。アズカバンを守る魔物・吸魂鬼(ディメンター)は囚人から幸せな記憶と希望を奪いますが、ベラトリックスは十数年の収監を経ても精神的な核心部分で崩壊することはなかったと考えられます。ヴォルデモートへの信仰そのものが、彼女を内側から支え続けたと推測されます。

長期収監はその外見を大きく損なっていました。かつての貴族的な美貌は失われ、頬は落ち窪み、やつれた様相となっていました(HP5-25、HP7)。

1996年1月、他の複数の死喰い人とともにアズカバンを集団脱獄しました(HP5)。魔法省はこの事実を当初隠蔽しようとしましたが、「日刊預言者新聞」がこれを報道しました。

第二次魔法戦争・神秘部の戦い

アズカバン脱獄後、ベラトリックスはヴォルデモートのもとへ戻り、再び死喰い人の中核として行動しました。その登場はハリーにとって原作中で初めての対面となります(HP5-35)。

1996年6月、ヴォルデモートはハリーを神秘部へ誘い込む罠を仕掛けました。ハリーは仲間たちと神秘部へ向かい、予言球をめぐって激しい戦闘が起こりました(神秘部の戦い、HP5-35)。この戦いでベラトリックスはいとこのシリウス・ブラックと直接対決し、放った呪文がシリウスの胸を捉えました。シリウスは笑みが顔に残ったまま後方へよろめき、死の間に架けられた石のアーチの帷(とばり)をくぐって消え去りました(HP5-35)。

二本目の閃光がシリウスの胸を真正面から打った。シリウスは後方へよろめいた。笑みを帯びた顔が驚きのために固まった。彼は後ろの古いアーチへと倒れ込み、ひらひらと揺れる石の帷を通り抜けてゆっくりと消えていった。

(HP5-35、意訳)

シリウスの死はハリーに激しい怒りをもたらし、ハリーはベラトリックスを追いかけました。ベラトリックスはあざ笑いながら逃げ、ハリーが磔の呪文(クルーシオ)を叫ぶと「怒りだけでは本当の力は出ないのよ」と嘲りました(HP5-36)。間もなくヴォルデモート卿が現れ、アルバス・ダンブルドアとの対決が始まりました。その場でヴォルデモートはベラトリックスを名前で呼び、彼女は主人に身をすり寄せるような態度を見せました(HP5-36)。

その後の1996年から97年にかけて、ベラトリックスは甥のドラコ・マルフォイに闇の魔術や閉心術(オクルメンシー)を指導しました(HP6-02)。HP6-02「スピナーズ・エンド」では、ドラコに課された困難な任務を前に不安を覚えた妹ナルシッサ・マルフォイがベラトリックスをセブルス・スネイプのもとへ連れて行く場面があり、ベラトリックスがスネイプへの疑いを強く持ち続けている様子も示されています(HP6-02)。

ホグワーツの戦い

1998年5月2日のホグワーツの戦いにおいて、ベラトリックスは最後まで戦場に立ち続けました。

この戦いで、ベラトリックスは姪のニンファドーラ・トンクスを殺害しました(J.K.ローリングによるコメントにて確認。後述「J.K.ローリングのコメント」参照)。ニンファドーラはベラトリックスが「純血の誇りを汚した」とみなし絶縁した妹アンドロメダの娘であり、実の叔母が姪の命を奪うという悲劇がここに生まれました。

戦いの最終局面、ヴォルデモートとハリーの最後の対決が大広間で行われているさなか、ベラトリックスはジニー・ウィーズリーに呪文を放ちました。その呪文はわずかにジニーをかすめただけでしたが(HP7-36)、これを目撃したモリー・ウィーズリーがほかの誰の助けも拒んで単身ベラトリックスに立ち向かいました。ベラトリックスはモリーを嘲笑しましたが、モリーの呪文はベラトリックスの胸を正確に打ちました。「凶悪な喜びが目から消え」、ベラトリックスはその場に倒れました(HP7-36)。こうしてヴォルデモートの最も忠実な死喰い人は、一人の母親の愛によって打ち倒されました。

外見

原作でのベラトリックスの外見に関する最初の詳細な描写は、HP4-30のペンシーブ場面で、ハリーが記憶の中で若い頃のベラトリックスを目撃する場面です。

彼女はまだ若く、長い黒髪を持ち、容貌には磨き上げられた美しさがあった。しかし目には危険な輝きが宿っていた。

(HP4-30、意訳)

アズカバンでの長期収監はその外見を著しく損ないました。HP5-35での実際の登場場面においてベラトリックスは、かつての美貌の面影を残しながらも、頬は落ち窪み、長い黒髪の艶は失われ、十数年の収監の痕跡を刻んだ容貌となっていました。

アンドロメダ・トンクスとの外見の酷似は特筆すべき描写です。HP7-05において、玄関口に立つアンドロメダを見たハリーは一瞬でベラトリックスと見間違えて杖に手をかけかけました。その描写はこう続きます。

戸口に立っていた女性は長い黒髪をしていた。ハリーは一瞬、ベラトリックス・レストレンジだと思い込み、咄嗟に杖へ手を伸ばした。そのとき自分の間違いに気づいた。この女性はもっと年上で、ベラトリックスよりも疲れを帯びた顔つきをしていたが、姉妹であることは一目で分かった。

(HP7-05、意訳)

同じ長い黒髪と整った顔立ちを持ちながら、ベラトリックスには「疲れを帯びた穏やかさ」とは正反対の、危険な光が宿っていました。この姉妹の容貌の一致と、まったく異なる表情のコントラストは、二人の対比を視覚的に強調しています。

映画シリーズではヘレナ・ボナム=カーター(Helena Bonham Carter)がHP5からHP7にわたってベラトリックスを演じ、その崩れた黒髪と狂気に満ちた表情は広く印象に残る造形となっています。

性格・人物像

ベラトリックスの性格を最もよく表すのは、ヴォルデモートへの絶対的かつ狂信的な忠誠心です。裁判の場で罰を受けることさえも誇りとして受け入れ、アズカバンへの収監もヴォルデモートへの信念を揺るがしませんでした(HP4-30)。他の多くの死喰い人がヴォルデモートの失踪後に彼への忠誠を放棄したのに対し、ベラトリックスは「忠実だったのは私たちだけ」と公言しました。この点においてベラトリックスは他の死喰い人とも一線を画しています。

純血至上主義の信奉者として、混血や「穢れた血(マグル生まれ)」を心底蔑んでいました。妹アンドロメダのマグル生まれとの結婚を「一族への裏切り」とみなし、アンドロメダとその娘ニンファドーラを最終的に自ら滅ぼすに至ったことは、この信念の徹底した実践を示しています。

痛みを与えることへの喜びは原作の随所に描かれています。磔の呪文を長時間にわたって維持し続けられるほどの技術と意志を持ち(フランクとアリスの拷問がその典型です)、戦闘においても「凶悪な喜び」を顔に浮かべます(HP7-36)。ハリーが磔の呪文を叫んだときには、「憎しみだけでは本当の力は出ない」と嘲って敵を精神的に揺さぶる冷静さも見せています(HP5-36)。

一方で、ベラトリックスはヴォルデモートに対して狂信的な忠誠を超えた深い感情的な執着を抱いていたことが示唆されています。ヴォルデモートとの間に秘密の娘デルフィーニをもうけていたという事実(CC)は、その感情が単なる服従ではなかったことを示しています。ヴォルデモートがこの事実を誰にも秘密にしていたことは、関係の一方通行的な側面を示唆しています。

ナルシッサ・マルフォイとの比較は、この人物像をより明確にします。二人は同じ純血主義の家で育ちながら、忠誠の対象が根本的に異なっていました。ベラトリックスの最優先はヴォルデモートへの奉仕であり、ナルシッサの最優先は息子ドラコの命でした。ホグワーツの戦いの最終局面でナルシッサがヴォルデモートに嘘をついてドラコを探しに行ったこと(HP7-36)と、最後の最後まで主人の敵と戦い続けたベラトリックスの姿は、この違いを端的に示しています。

また、スネイプへの根強い不信感(HP6-02)はその一例であり、忠誠心の深さゆえに主人への裏切りを誰よりも鋭敏に察知しようとする傾向がありました。

魔法の能力

ベラトリックスはヴォルデモートの死喰い人の中でも際立って高い魔力を持つ魔女と評されており、闇の魔術・戦闘・精神魔法の各分野で卓越した能力を示しました。

呪文・戦闘魔法

磔の呪文(クルーシオ)はベラトリックスが最も得意とする攻撃呪文です。フランク・ロングボトムとアリス・ロングボトムを廃人状態にするほどの強度と継続時間で磔の呪文を維持したことは(HP4-30)、その呪文の圧倒的な威力を示しています。磔の呪文の効力は憎悪や痛みを与えたいという意志の強さに比例するとされており(HP5-36)、ベラトリックスはその点でも群を抜いていました。

神秘部の戦い(HP5-35)およびホグワーツの戦い(HP7)を通じて、ベラトリックスは複数の優秀な魔法使い・魔女を相手に一人で対峙する場面を何度も見せており、その戦闘能力の高さは疑いありません。神秘部の戦いではハーマイオニー・グレンジャーをも相手にして圧倒しました(HP5-35)。

閉心術(オクルメンシー)

ベラトリックスは閉心術(オクルメンシー)の使い手であり、甥のドラコ・マルフォイにこの技術を直接指導しました(HP6-02)。閉心術は心を外からの精神的侵入(開心術)に対して閉ざす高度な魔法であり、ベラトリックスが他者を指導できるほどの習熟度を持つことは、彼女の魔法的実力の幅広さを示しています。

ほうきなしの飛行

第二次魔法戦争中、ベラトリックスはほうきを用いずに飛行する能力を習得していたことがポッターモアの記述で示されています(PM)。この能力は非常に稀なものであり、ヴォルデモート自身もこれを得意としていましたが、ベラトリックスもこれを可能にしていたとされています。HP7においてもベラトリックスが空中の戦闘に参加している描写があります(HP7)。

ベラトリックスの杖はウォールナット(胡桃)、ドラゴンの心臓の琴線、12と3/4インチ、非常に頑固(unyielding)とポッターモアに記述されています(PM)。1997年、マルフォイ邸でハリー、ロン、ハーマイオニーが囚われた際(HP7-23)、この杖はハリーに奪われました。ハリーはベラトリックスの杖を使ってグリンゴッツ銀行への侵入を果たしましたが(HP7-26)、その後の杖の行方については原作に明記されていません。

人間関係

ベラトリックスとヴォルデモートの関係は、主人と従者という枠組みを超えた、一方的かつ狂信的な執着に近いものでした。ベラトリックスはヴォルデモートをただの上位者としてではなく、信仰の対象として崇拝していました。裁判の場で服従を拒み、アズカバンでの長期収監を耐え抜いたのも、この信念の深さゆえです(HP4-30)。ヴォルデモートもベラトリックスを自分の最も忠実な従者として遇し、重要な任務を与え続けました。

『ハリー・ポッターと呪いの子』(CC)において、ベラトリックスがヴォルデモートとの間に秘密の娘デルフィーニをもうけていたことが明らかになります。ヴォルデモートはこの事実を側近の誰にも伏せており、ベラトリックスの感情がどの程度報われていたかは、定かではありません。

シリウスはベラトリックスのいとこにあたります(HP5-06)。両者はブラック家の出身でありながら、まったく異なる道を歩みました。シリウスはブラック家の純血主義を拒否してグリフィンドールに組み分けられ一族から勘当されましたが(HP5-06)、ベラトリックスは純血主義の信奉者としてヴォルデモートに仕え続けました。

神秘部の戦い(HP5-35)において、ベラトリックスはシリウスと直接対峙し、その呪文でシリウスを死の間のアーチの帷へと吹き飛ばしました。同じ血を引くいとこが、その手で互いの路線の決着をつけることとなりました。

三姉妹の次女アンドロメダはマグル生まれのテッド・トンクスと結婚し、ブラック家の家系図から名前を焼き消されました(HP5-06)。ベラトリックスにとってアンドロメダの選択は純血の誇りへの裏切りであり、二人の間の断絶は結婚の時点から始まり、以後没交渉であったと考えられます(HP5、HP7)。

ベラトリックスとアンドロメダは容貌が非常に酷似していながら(HP7-05)、その生き方は対極をなしていました。同じ純血の家に生まれ、同じ血を受け継ぎながら、一方は純血主義の最も残酷な体現者となり、もう一方はその価値観を拒絶してマグル生まれの夫を選びました。ブラック家というテーマにおいて、この二人の対比は核心をなしています。

三姉妹の末妹ナルシッサはマルフォイ家に嫁いでおり、ベラトリックスと同様に純血主義の家に属し続けました。HP6-02においては、ドラコへの任務を案じたナルシッサがベラトリックスを伴ってスネイプを訪ねる場面があり、二人が親密な姉妹関係にあることが示されています。

しかし、この場面でもベラトリックスはヴォルデモートへの奉仕を絶対視する姿勢を示しており、息子への愛情を最優先とするナルシッサとは、同じ純血主義の信奉者でありながら忠誠の序列が根本的に異なっていました。ホグワーツの戦いの最終局面でナルシッサがヴォルデモートに嘘をついてハリーの「死」を偽ったことと(HP7-36)、最後まで戦場に立ち続けたベラトリックスの姿は、この違いを際立たせています。

ニンファドーラ・トンクスはアンドロメダとテッド・トンクスの娘であり、ベラトリックスにとっては実の姪にあたります。しかし二人の間に家族的な交流はなく、ベラトリックスはニンファドーラを純血の誇りを汚す存在として認識していたと考えられます。ホグワーツの戦いにおいてベラトリックスがニンファドーラを殺害したことは(JKR、PotterCast 2007年)、実の叔母が姪の命を奪うという一層の悲劇性を帯びています。

ホグワーツの戦い(HP7-36)におけるベラトリックスとモリー・ウィーズリーの一騎打ちは、物語の中でも最も劇的な対決のひとつです。娘ジニーへの呪いを目撃したモリーは、他の誰の助けも拒んでベラトリックスに単独で立ち向かいました。ベラトリックスはモリーを嘲笑しましたが、モリーの呪文がベラトリックスの胸を貫き、ベラトリックスは倒れました(HP7-36)。

J.K.ローリングはこの対決を「二種類の愛の衝突」と表現しており(後述「J.K.ローリングのコメント」参照)、ベラトリックスのヴォルデモートへの狂信的な執着と、モリーの家族への母としての愛を対置させた、物語のテーマ全体を凝縮した場面となっています。

ハリーとベラトリックスの関係は、シリウスの死を通じて深い個人的な敵対関係へと発展しました。HP5-35でシリウスを帷へと吹き飛ばしたベラトリックスに対し、ハリーは激しい怒りのもとに磔の呪文を叫んで追いかけましたが(HP5-36)、ベラトリックスはその呪文を受けながらも「怒りだけでは十分な力は出ない」と嘲り、ハリーを挑発しました(HP5-36)。以後、ハリーにとってベラトリックスはヴォルデモートに次ぐ、最も危険な敵のひとりであり続けました。

名前の由来

「ベラトリックス(Bellatrix)」はラテン語で「女性の戦士」または「戦う女性」を意味します(bellator「戦士」の女性形)。夜空ではオリオン座のγ星(ガンマ星)の固有名でもあり、明るい輝きを持つ星として知られます。

ブラック家では子どもたちに星や星座にちなんだ名前をつける慣習があります(HP5-06)。妹ナルシッサ(Narcissa)はギリシャ神話の人物名、いとこのシリウス(Sirius)は大犬座の一等星、レグルス(Regulus)はしし座の一等星にそれぞれ由来しており、ベラトリックスも星の名を持つ一族の慣習に則っています。「女性の戦士」を意味する名が、ヴォルデモートの最も凶暴な死喰い人に与えられたことは、J.K.ローリングの意図的な命名と言えます。

「レストレンジ(Lestrange)」はフランス語の「l'étrange」に由来し、「奇妙なもの」「異質なもの」という意味を持ちます。死喰い人の中でも際立って狂信的な人物に与えられたこの姓には、皮肉な適切さがあります。

J.K.ローリングのコメント

モリー・ウィーズリーとベラトリックスの対決について:

It was the meeting of two kinds of love [...] I wanted to match that kind of obsession with maternal love... the power that you give someone by loving them. So Molly was really an amazing exemplar of maternal love.

(それは二種類の愛の出会いでした。[……] そうした執着を、母としての愛――誰かを愛することで与えられる力と対峙させたかったのです。モリーは本当に、母性愛の素晴らしい体現者でした。)

J.K.ローリング、カーネギーホールでのイベント(2007年10月)

この発言は、ベラトリックスとモリーの対決が単なる物語上の盛り上がりではなく、「狂信的な執着(ベラトリックスのヴォルデモートへの愛)」対「母親の愛(モリーの家族への愛)」というテーマ的な対比として意図的に設計されていたことを示しています。

トンクスの死にベラトリックスが関わったことについて:

Bellatrix killed Tonks.

(ベラトリックスがトンクスを殺した。)

J.K.ローリング、PotterCast #131(2007年)

このコメントにより、ホグワーツの戦いでのニンファドーラ・トンクスの死がベラトリックスの手によるものであることが公式に確認されています。原作本文にはその詳細が描かれておらず、ローリング自身の発言によって初めて明らかにされた情報です。実の叔母が姪の命を奪ったという事実は、ベラトリックスの狂信性と、「出自ではなく選択が人を定める」というシリーズのテーマを同時に照射しています。

舞台裏

年表

年表

1951年頃

  • ベラトリックス・ブラック誕生(推定。正確な年月日は公式資料に明記なし)

1960年代初頭頃

1960年代後半頃

  • ホグワーツ卒業(推定)

1970年代頃

1970年代初頭頃

1981年10月31日

  • ヴォルデモートがゴドリックの谷でハリー・ポッターを倒そうとして力を失う

1981〜82年頃

1996年1月頃

  • 他の死喰い人とともにアズカバンから集団脱獄(HP5)

1996年6月

1996〜97年

  • ドラコ・マルフォイに閉心術(オクルメンシー)を指導(HP6-02)
  • ヴォルデモートとの間に娘デルフィーニを密かにもうける(CC)

1998年5月2日

登場・言及箇所