ブラック家

ブラック家 (Black family) は、イギリス魔法界の純血の一族です。「高貴なる由緒正しきブラック家」を称し、「純血よ永遠なれ」を家訓に掲げました[1]。1930年代に匿名で出版された名鑑が「間違いなく純血」と認めた28家、いわゆる「聖28一族」の一つでもあります[2][3]。代々スリザリン寮に属し[4]、純血主義から外れた者は家系図から名を焼き消されました[1:1]。直系は1996年にシリウス・ブラックが死んだことで絶えています[5][6]

家系情報

名前: ブラック家 (Black family)
血統: 純血
「聖28一族」: 該当する
家訓: 純血よ永遠なれ (Toujours Pur)
本拠地: ロンドン、グリモールド・プレイス十二番地
主な寮: スリザリン(判明している例外はシリウスのみ)

主な家族構成員

家訓と由緒

グリモールド・プレイス十二番地の客間には、壁一面を覆う古いタペストリーが掛かっています。金の刺繍糸で家系図が縫い取られ、その広がりは中世まで遡ります[1:2]。最上部に記されているのが、一族の名と家訓です。

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第6章「高貴なる由緒正しきブラック家」

高貴なる由緒正しきブラック家

〝純血よ永遠なれ〟

家訓の Toujours Pur はフランス語です。屋敷しもべ妖精のクリーチャーによれば、このタペストリーは七世紀にわたって家に伝わるものでした[1:3]。同じ家訓は家紋にも添えられており、レギュラスの部屋では、スリザリンの色に覆われた寝台の上に家紋と家訓が丹念に描かれていました[7]

一族の伝統

純血と勘当

一族は純血同士の縁組を重んじました。その結果として、純血の家系はどこも縁続きになっているとシリウスは説明しています[1:4]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第6章「高貴なる由緒正しきブラック家」

「純血家族はみんな姻戚関係だ」シリウスが言った。「娘も息子も純血としか結婚させないというのなら、あまり選択の余地はない。純血種はほとんど残っていないのだから。モリーも結婚によってわたしと従姉弟関係になった。アーサーは、わたしの又従兄の子供か何かに当たるかな。しかし、ウィーズリー家をこの図で探すのはむだだ――血を裏切る者ばかりを輩出した家族がいるとすれば、それがウィーズリー家だからな」

この方針から外れた者は、タペストリーから名を焼き消されました。跡はタバコの焼け焦げのような小さな丸い穴として残ります[1:5]。シリウス自身も16歳で家出したのち、母の手で消されています[1:6]。従姉のアンドロメダも、マグル生まれのテッド・トンクスと結婚したことで同じ扱いを受けました[1:7]

シリウスは、一族の面々をこう評しました[1:8]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第6章「高貴なる由緒正しきブラック家」

「もう何年もこれを見ていなかったな。フィニアス・ナイジェラスがいる……曾曾祖父だ。わかるか?……ホグワーツの歴代の校長の中で、一番人望がなかった……アラミンタ・メリフルア……母の従姉だ……マグル狩りを合法化する魔法省令を強行可決しようとした……親愛なるおばのエラドーラだ……屋敷しもべ妖精が年老いて、お茶の盆を運べなくなったら首を刎ねるというわが家の伝統を打ち立てた……当然、少しでもまともな魔法使いが出ると、勘当だ

星と星座の名

子どもに星や星座にちなむ名を付ける習わしがありました。この慣習は原作本文ではなく、ポッターモアの記事で作者が一族の伝統として述べたものです[8]

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たとえばブラック家などでは、子どもには星や星座の名前を付ける習わしがあります(非常に高い野心と自尊心を持つこの一族にはぴったりだと言う人も多くいます)。

シリウス(おおいぬ座α星)、レギュラス(しし座α星)、ベラトリックス(オリオン座γ星)、アンドロメダ(アンドロメダ座)、アークタルス(うしかい座α星)などがこの流儀にあたります。ただし一族の全員がそうではなく、ナルシッサはギリシャ神話のナルキッソスに通じる名で、星座の系列にはありません。

スリザリン

一族は代々スリザリン寮に属しました。個人名で寮を述べられていない人物についても、当時の寮監だったホラス・スラグホーンが家名でこう語っています[4:1]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第4章「ホラス・スラグホーン」

ブラック家は全員わたしの寮だったが、シリウスはグリフィンドールに決まった。残念だ――能力ある子だったのに。弟のレギュラスが入学して来たときは獲得したが、できれば一揃いほしかった

判明している例外はシリウスだけで、本人もホグワーツ特急の車内でそう述べています[9]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第33章「プリンスの物語」

「僕の家族は、全員スリザリンだった」シリウスが言った。

屋敷しもべ妖精

屋敷しもべ妖精が年老いて茶の盆を運べなくなったら首を刎ねる、という伝統がありました。シリウスによれば、これを始めたのはおばのエラドーラです[1:9]。刎ねられた首は剥製にされ、グリモールド・プレイス十二番地の階段に飾られていました[10]

一族に仕えたクリーチャーは、シリウスの母 Walburga に忠実で、屋敷の物が捨てられることに強く抵抗しました。一族の遺品を屋根裏から集めて自分の物置に隠していたことも、のちに分かっています[11]

グリモールド・プレイス十二番地

ロンドンにあるこの屋敷が一族の本拠地でした。シリウスの父の代に、魔法使いの知るかぎりの安全対策が施されており、位置を探ることができません。第二次魔法戦争では不死鳥の騎士団の本部として使われました[1:10]

屋敷には一族の家宝が残されていました。客間の掃除では、家紋を打ち出した15世紀の小鬼細工の銀器が出てきています[12]マンダンガス・フレッチャーは、シリウスの生前から死後にかけて屋敷の品をくすねていました[7:1]。1996年秋、ホグズミードで家紋入りのゴブレットを売ろうとしているところをハリーに見咎められ[13]、肖像画のフィニアス・ナイジェラスは家宝が盗まれたことに憤慨しています[14]。クリーチャーによれば、盗まれたもののなかには写真・手袋・勲一等マーリン勲章、そしてレギュラスが遺したロケットもありました[7:2]

家系図のタペストリーは、壁から剥がそうとするあらゆる手段に抵抗しました[1:11]。1997年にハリーたちが屋敷へ避難したときにも、そのまま壁に掛かっています[15]

魔法戦争と一族の終わり

シリウスの両親は死喰い人ではありませんでしたが、魔法族の浄化とマグル生まれの排除というヴォルデモートの主張には賛同していました[1:12]

一族の若い世代は、この立場をめぐって分かれます。レギュラスは死喰い人に加わり、命じられたことに恐れをなして離脱を図り、ヴォルデモートの命令で殺されました[1:13]。ベラトリックスはヴォルデモートに最も忠実な死喰い人となり、ナルシッサはルシウス・マルフォイに嫁いで純血の家に残りました[1:14]。アンドロメダはマグル生まれと結婚して勘当されました。シリウスは16歳で家を出てジェームズ・ポッターの家に身を寄せ、のちに不死鳥の騎士団に加わっています[1:15]

家督は、ブラックの姓を持つ直系の男子へ受け継がれる決まりでした。この慣習をダンブルドアが説明しています[6:1]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第3章「遺志と意思」

「ブラック家の伝統で、あの屋敷は代々、ブラックの姓を持つ直系の男子に引き継がれる決まりになっておった。シリウスはその系譜の最後の者じゃった。弟のレギュラスが先に亡くなり、二人とも子供がおらなかったからのう。

1996年にシリウスが死んだとき、肖像画のフィニアス・ナイジェラスはその死をこう受け止めました[5:1]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第37章「失われた予言」

「こういうことかね?」フィニアス・ナイジェラスがハリーの左側でゆっくりと言った。「私の曾々孫が――ブラック家の最後の一人が――死んだと?」

ブラックの姓を継ぐ者はこれで絶えました。ただし血筋そのものは、母方を通じてドラコ・マルフォイテディ・ルーピンに伝わっています。

J.K. ローリング自筆の家系図

2006年2月、作者自筆のブラック家の家系図が、ロンドンで開かれたチャリティオークションに出品されました。アフリカの学校へ本を届ける団体 Book Aid International が主催したもので、45人の作家が自筆の作品を寄付しています[16]。6世代にわたって描かれた一点物で、作者のサインが入っています[17]。この家系図に公式の日本語訳はないため、以下は原文を示したうえで訳を添えています。

J.K. ローリング自筆「ブラック家の家系図」(2006年)

The Noble and Most Ancient House of BLACK (there are many stories between the lines)

(高貴なる由緒正しきブラック家――行間には多くの物語がある)

紋章のリボンには、原作のタペストリーと同じ Toujours Pur の文字が記されています[17:1]。右下には、シリウスが自分の焼け跡を指す HP5-06 の場面が引用として添えられ、図と原作が対応づけられています[17:2]

図には血筋の23名と、婚姻で入った配偶者14名の名が書かれています。加えて名前を焼き消された跡が7個あり、それぞれに番号が振られています[17:3]

図に載る人物の多くは原作に登場せず、公式の日本語訳もありません。そのため以下では図の表記のまま英語で示し、原作にも登場する人物にかぎって日本語名を括弧で添えています。

図に描かれた人物

世代 図の表記 生没年 配偶者
1 Sirius 1845–1853
1 Phineas Nigellus(フィニアス・ナイジェラス) 1847–1925 Ursula Flint
1 Elladora(エラドーラ) 1850–1931
1 焼け跡 1.(Iola Black) Bob Hitchens
2 Sirius 1877–1952 Phineas Nigellus × Ursula Flint Hesper Gamp
2 Arcturus 1884–1959 Phineas Nigellus × Ursula Flint Lysandra Yaxley
2 Belvina 1886–1962 Phineas Nigellus × Ursula Flint Herbert Burke
2 Cygnus 1889–1943 Phineas Nigellus × Ursula Flint Violetta Bulstrode
2 焼け跡 2.(Phineas) Phineas Nigellus × Ursula Flint
3 Arcturus 1901–1991 Sirius(1877–1952)× Hesper Gamp Melania Macmillan
3 Lycoris 1904–1965 Sirius(1877–1952)× Hesper Gamp
3 Regulus 1906–1959 Sirius(1877–1952)× Hesper Gamp
3 Callidora 1915– Arcturus(1884–1959)× Lysandra Yaxley Harfang Longbottom
3 Charis 1919–1973 Arcturus(1884–1959)× Lysandra Yaxley Caspar Crouch
3 焼け跡 4.(Cedrella Black) Arcturus(1884–1959)× Lysandra Yaxley Septimus Weasley
3 Pollux 1912–1990 Cygnus(1889–1943)× Violetta Bulstrode Irma Crabbe
3 Cassiopeia 1915–1992 Cygnus(1889–1943)× Violetta Bulstrode
3 Dorea 1920–1977 Cygnus(1889–1943)× Violetta Bulstrode Charlus Potter
3 焼け跡 3.(Marius Black) Cygnus(1889–1943)× Violetta Bulstrode
4 Lucretia 1925–1992 Arcturus(1901–1991)× Melania Macmillan Ignatius Prewett
4 Orion 1929–1979 Arcturus(1901–1991)× Melania Macmillan Walburga
4 Walburga 1925–1985 Pollux × Irma Crabbe Orion
4 Cygnus 1938–1992 Pollux × Irma Crabbe Druella Rosier
4 焼け跡 5.(Alphard Black/アルファード) Pollux × Irma Crabbe
5 Regulus(レギュラス 1961–1979 Orion × Walburga
5 焼け跡 6.(シリウス・ブラック Orion × Walburga
5 Bellatrix(ベラトリックス 1951– Cygnus(1938–1992)× Druella Rosier Rodolphus Lestrange(ロドルファス・レストレンジ)
5 Narcissa(ナルシッサ 1955– Cygnus(1938–1992)× Druella Rosier Lucius Malfoy(ルシウス・マルフォイ
5 焼け跡 7.(アンドロメダ・ブラック Cygnus(1938–1992)× Druella Rosier Ted Tonks
6 Draco Malfoy(ドラコ・マルフォイ 1980– Narcissa × Lucius Malfoy

夫婦の子の人数は 2s 1d(息子2人・娘1人)のような略記で示されており、名前が書かれていない子もいます[17:4]

シリウスとアンドロメダは、この図に名も生年も残っていません。焼き消された7人に含まれるからです。焼け跡には 1. から 7. の番号が振られており、左下に並ぶ7人の名がその順に対応します[17:5]

勘当された人々

図の左下には、名を焼き消された7人と、その理由が並んでいます[17:6]

J.K. ローリング自筆「ブラック家の家系図」(2006年)

Disowned Family Members
Iola Black – married Muggle Bob Hitchens
Phineus – supported Muggle Rights
Marius Black – Squib
Cedrella Black – married blood traitor Septimus Weasley
Alphard Black – gave gold to runaway nephew Sirius
Sirius Black – ran away from home
Andromeda Black – married Muggle-born Ted Tonks

(勘当された家族/Iola Black――マグルの Bob Hitchens と結婚/Phineus――マグルの権利を支持した/Marius Black――スクイブ/Cedrella Black――血を裏切る者 Septimus Weasley と結婚/Alphard Black――家出した甥のシリウスに金貨を与えた/Sirius Black――家を出た/Andromeda Black――マグル生まれのテッド・トンクスと結婚)

勘当の理由は、マグルとの結婚、マグルの権利の支持、スクイブとして生まれたこと、血を裏切る者との結婚、家出、そして家出した甥への援助です。純血であることそのものよりも、一族の主義に従うかどうかが問われていたことが分かります。

このうちアルファードについてはシリウスも語っており、彼が残した金貨のおかげで17歳から独立して暮らせたと述べています[1:16]

他の一族との関係

婚姻を通じて、多くの純血の一族と縁続きになっています。

一族 縁組
マルフォイ家 Narcissa が Lucius Malfoy に嫁ぎ、Draco が生まれた[1:17]
レストレンジ家 Bellatrix が Rodolphus Lestrange と結婚[1:18]
ウィーズリー家 Cedrella が Septimus Weasley と結婚し、勘当された[17:7]
ポッター家 Dorea が Charlus Potter と結婚した[17:8]
ロングボトム家 Callidora が Harfang Longbottom と結婚した[17:9]
クラウチ家 Charis が Caspar Crouch と結婚した[17:10]
プルウェット家 Lucretia が Ignatius Prewett と結婚した[17:11]

シリウスはモリー・ウィーズリーと結婚によって従姉弟にあたり、アーサーとも遠い縁続きだと述べています[1:19]

家系図に載る Charlus Potter と Dorea の子は「息子1人」と記号で示されるだけで、名は書かれていません[17:12]。ハリーの祖父母はフリーモントとユーフィミアだと作者が別に述べているため[18]、この息子はジェームズではありません。

登場・言及箇所

脚注


  1. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第6章「高貴なる由緒正しきブラック家」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「Pure-Blood」 ↩︎

  3. Pottermore Presents『ホグワーツ 権力と政治と悪戯好きのポルターガイスト』 ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第4章「ホラス・スラグホーン」 ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第37章「失われた予言」 ↩︎ ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第3章「遺志と意思」 ↩︎ ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第10章「クリーチャー語る」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  8. ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「命名予見者」 ↩︎

  9. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第33章「プリンスの物語」 ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第9章「ウィーズリーおばさんの嘆き」 ↩︎

  11. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第24章「閉心術」 ↩︎

  12. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第5章「不死鳥の騎士団」 ↩︎

  13. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第12章「シルバーとオパール」 ↩︎

  14. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第13章「リドルの謎」 ↩︎

  15. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第9章「隠れ家」 ↩︎

  16. オークションの詳細は BBC News の報道による。Potter star buys Rowling document(2006年2月22日) ↩︎

  17. J.K. ローリング自筆「ブラック家の家系図」(2006年、Book Aid International チャリティオークション出品) ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  18. ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「ポッター家」 ↩︎