蘇りの石

蘇りの石 (Resurrection Stone) は、死者を呼び戻す力を持つとされる石です。死の秘宝の一つに数えられ、「三人兄弟の物語」では「死」が二番目の兄に与えた贈り物として語られます[1]。手の中で三度回すと、亡き人の姿が現れます[2]

基本情報

名称: 蘇りの石 (Resurrection Stone)
分類: 死の秘宝の一つ
由来: 「三人兄弟の物語」で「死」が川岸から拾い、二番目の兄に与えた石
外見: 黒い石。中央にギザギザの割れ目が走り、死の秘宝の印が刻まれている
使い方: 手の中で三度回す
所有者: ペベレル家 → マールヴォロ・ゴーント → ヴォルデモートアルバス・ダンブルドアハリー・ポッター
現在: 禁じられた森に落ちたまま

三人兄弟の物語

石の由来は、『吟遊詩人ビードルの物語』所収の「三人兄弟の物語」に語られています。橋をかけて川を渡った三人の兄弟に「死」が褒美を与えると告げたとき、二番目の兄が求めたのが、人々を死から呼び戻す力でした[1:1]

『吟遊詩人ビードルの物語』

二番目の兄は、傲慢な男でしたから、『死』をもっとはずかしめてやりたいと思いました。そこで、人々を『死』から呼びもどす力を要求しました。すると『死』は、川岸から一個の石を拾って二番目の兄に与え、こう言いました。

「この石は、死者を呼びもどす力を持つであろう」

家に戻った次兄が石を三度回すと、若くして死んだ、かつて結婚を夢見た女性の姿が現れます。しかし彼女は無口で冷たく、ベールで仕切られているかのようでした。この世に完全にはなじめずに苦しむ彼女を見て、次兄は望みのない思慕に苦しみ、本当に一緒になるために自ら命を絶ちます[1:2]

物語に注釈を寄せたアルバス・ダンブルドアは、この女性が真に死から蘇ったわけではないと書いています。彼女は次兄を「死」の腕に誘い込むために送り込まれたのであり、だからこそ冷たく、よそよそしく、存在と非存在のあいだで次兄を焦らすのです[1:3]

ダンブルドアはまた、「石」が発見されたことは一度もないとも述べています。闇の魔法使いたちは蘇りの卑しい代用品として「亡者」を作り出しましたが、操り人形の亡者は真に蘇った人間ではありません[1:4]

秘宝を信じる者は、この石を実在する品と考えます。ゼノフィリウス・ラブグッドが羊皮紙に描いた秘宝の印では、石は縦線の上に重ねた円で表されました[3]。石が現実のものだと言える根拠を問われた彼は、そうでないことを証明してみろとハーマイオニー・グレンジャーに応じています[3:1]

石が呼び戻すもの

物語の外でも、石は同じように働きます。ハリー・ポッターが手の中で石を三度回したとき、現れた人々はゴーストとも生身の体とも違っていました[2:1]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」

ゴーストとも違う、かといって本当の肉体を持ってもいない、ということがハリーにはわかった。ずいぶん昔のことになるが、日記から抜け出したあのリドルの姿に最も近く、記憶がほとんど実体になった姿だった。生身の体ほどではないが、しかしゴーストよりずっとしっかりした姿が、それぞれの顔に愛情のこもった微笑を浮かべて、ハリーに近づいてきた。

呼び出された者の姿は、呼んだ本人にしか見えません。森を捜索していた死喰い人がすぐそばまで来ても、ジェームズたちに気づくことはありませんでした[2:2]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」

「私たちは、君の一部なのだ」シリウスが言った。「ほかの人には見えない」

石は死者を生き返らせるものではありません。ハーマイオニーは、どんな魔法でも死者を蘇らせることはできないと言い切っています[4]

マールヴォロ・ゴーントの指輪

石は長く、醜い金の指輪にはめ込まれた黒い石として、ヴォルデモートの母方の家系であるゴーント家に伝わっていました。ゴーントの家を訪ねた魔法省の役人オグデンに、マールヴォロ・ゴーントはその指輪を突きつけて自慢しています[5]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第10章「ゴーントの家」

「これが見えるか? 見えるか? 何だか知っているか? これがどこから来たものか知っているか? 何世紀も俺の家族の物だった。それほど昔に遡る家系だ。しかもずっと純血だ! どれだけの値段をつけられたことがあるかわかるか? 石にペベレル家の紋章が刻まれた、この指輪に!」

ゴーントが紋章と呼んだ引っかき傷のような線は、実際には死の秘宝の印でした。この結びつきに気づいたのはハリーです。ゴドリックの谷の墓石で見た印と、絶えたペベレル家の血筋、そして憂いの篩の中で見たゴーントの指輪が、彼の中でつながりました[4:1]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第22章「死の秘宝」

「そう、そうだよ。そうなんだ!」ハリーは慎重さを投げ捨てて言った。「あれが石だったんだ。そうだろう?」ハリーは応援を求めるようにロンを見た。「もしもあれが『蘇りの石』だったら?」

ゴーント自身は、指輪が本当は何なのかを知らなかっただろうとハリーは考えました。純血であることだけを誇りにしていた老人にとって、石の引っかき傷は貴族の紋章でなければならなかったのです[4:2]

分霊箱と呪い

ヴォルデモートはこの指輪を分霊箱の一つに変え、先祖の廃屋に隠しました。ただし、はめ込まれた石が死の秘宝であることには気づいていません[6]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章「キングズ・クロス」

「知らなかったじゃろう。分霊箱にした物の一つが、『蘇りの石』であることにも気づかなかったのじゃから。しかし、ハリー、たといあの者が秘宝のことを知っていたにせよ、最初の品以外に興味を持ったとは思えぬ。『マント』が必要だとは考えなかったろうし、石にしても、いったい誰を死から呼び戻したいと思うじゃろう? ヴォルデモートは死者を恐れた。あの者は誰をも愛さぬ」

長い歳月をかけて隠し場所を突き止めたダンブルドアは、指輪を見つけた瞬間、それが分霊箱であることも、呪いがかけられていることも忘れて指にはめました[6:1]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章「キングズ・クロス」

「何年もかかって、ようやくゴーントの廃屋に埋められているその石を見つけた。石は秘宝の中でもわしがいちばん強く求めていたものじゃった――もっとも若いときは、まったく違う理由で石がほしかったのじゃが。石を見て、わしは正気を失ったのじゃよ、ハリー。すでにそれが『分霊箱』になっていることも、指輪には間違いなく呪いがかかっていることも、すっかり忘れてしもうた。指輪を取り上げ、それをはめた。一瞬わしは、アリアナや母、そして父に会えると思った。そしてみんなに、わしがどんなにすまなく思っているかを伝えられると思ったのじゃ……」

指輪の呪いはダンブルドアの片手を蝕みました。ホグワーツに戻った彼を処置したのはセブルス・スネイプで、呪いを片手に封じ込めることしかできず、余命は一年ほどだと告げています[7]。ダンブルドアはグリフィンドールの剣で指輪を割り、そこに宿っていた魂の欠片を破壊しました[8][7:1]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第33章「プリンスの物語」

「なぜその指輪をはめたのです? それには呪いがかかっている。当然ご存知だったでしょう。なぜ触れたりしたのですか?」

マールヴォロ・ゴーントの指輪が、ダンブルドアの前の机に載っていた。割れている。グリフィンドールの剣がその脇に置いてあった。

石は割れましたが、死の秘宝の印は残り、のちにハリーの手に渡ります[2:3]

ハリーへの遺贈

ダンブルドアは遺言で、ハリーがホグワーツでの最初のクィディッチ試合で捕まえた金のスニッチをハリーに遺しました[9]。スニッチには「私は終わるときに開く」という文字が浮かび上がりましたが、ハリーはその意味を長く読み解けませんでした[9:1]

石がその中にあると確信したハリーは、呪文を唱え、蛇語まで試しますが、スニッチは開こうとしません[4:3]

スニッチが開いたのは、ハリーが自らの死を受け入れて禁じられた森へ向かう道の途中でした[2:4]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」

ハリーは、金色の金属を唇に押し当てて囁いた。

「僕は、まもなく死ぬ」

金属の殻がぱっくり割れた。

森でふたたび

割れたスニッチの中には、真ん中に割れ目の走る黒い石がありました[2:5]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」

二つに割れたスニッチの中央に、黒い石があった。真ん中にギザギザの割れ目が走っている。「蘇りの石」は、ニワトコの杖を表す縦の線に沿って割れていたが、マントと石を表す三角形と円は、まだ識別できた。

ハリーが目をつむって石を三度回すと、ジェームズリリーシリウス・ブラックリーマス・ルーピンが現れました。四人はハリーとともに森の奥へ歩き、吸魂鬼の冷たさのなかで守護霊の役目を果たします[2:6]。ヴォルデモートの前に進み出るとき、石はハリーの指から滑り落ちました[2:7]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」

「蘇りの石」が、感覚のない指からすべり落ちた。焚き火の灯りの中に進み出ながら、ハリーは、両親もシリウスもルーピンも消えるのを、目の端でとらえた。

キングズ・クロスでダンブルドアは、自分ならこの石を、安らかに眠っている者を無理やり呼び戻すために使っただろうと述べました。ハリーが使ったのは自らの犠牲を可能にするためであり、そこが違うというのです[6:2]

その後

戦いが終わったあと、ハリーは校長室の肖像画のダンブルドアに、石を探しに戻らないと告げました[10]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第36章「誤算」

「森で落としてしまいました。その場所ははっきりとは覚えていません。でも、もう探しに行くつもりもありません。それでいいでしょうか?」

「ハリーよ、それでよいとも」

落ちた場所を知る者はほかにいません[10:1]

賢者の石との関係

ダンブルドアは注釈のなかで、ビードルが「賢者の石」に触発されて蘇りの石を創作したと考える評論家が多いことを紹介しています[1:5]。賢者の石は、不老不死の霊薬である「命の水」の元となる石です。

登場・言及箇所

脚注


  1. 『吟遊詩人ビードルの物語』「三人兄弟の物語」(ダンブルドアの注釈を含む) ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第21章「三人兄弟の物語」 ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第22章「死の秘宝」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第10章「ゴーントの家」 ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章「キングズ・クロス」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第33章「プリンスの物語」 ↩︎ ↩︎

  8. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第23章「ホークラックス」 ↩︎

  9. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第7章「アルバス・ダンブルドアの遺言」 ↩︎ ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第36章「誤算」 ↩︎ ↩︎