透明マント

透明マント (Invisibility Cloak) は、着た者の姿を隠すマントです。魔法界では珍しく高価な品ですが、実在する魔法道具で、アラスター・ムーディのように複数枚を所有する魔法使いもいます[1]。ただし多くのマントは年月とともに効力を失います[2]

例外が一枚あります。ハリー・ポッターが父から受け継いだマントで、これは死の秘宝の一つ、「三人兄弟の物語」で「死」が末の弟に渡した「死」自身のマントとされる品です[3][4]

基本情報

名称: 透明マント (Invisibility Cloak)
作り方: デミガイズの毛皮を織る/旅行用のマントに目くらまし術を染み込ませる/眩惑の呪いをかける
効果: 着た者の姿を隠す
限界: 多くは何年か経つと色褪せて半透明になる。破れることもあり、現れ呪文で解除されることもある
代替手段: 姿を隠すために魔法使いがまず使うのは目くらまし呪文
例外: 死の秘宝の一枚。完全に透明にし、永久に効力が続き、どんな呪文をかけても見通せない

透明マントという道具

透明マントは、いくつかの方法で作られます。極東に棲むデミガイズは、細く長い絹のような銀色の毛に覆われた草食動物で、その毛皮は織れば透明マントになるため珍重されています[5]。旅行用のマントに目くらまし術を染み込ませたものや、眩惑の呪いをかけた品も、同じように姿を隠します[2:1]

いずれも永続はしません。はじめのうちは隠してくれますが、何年か経つと色褪せて半透明になります[2:2]。ダンブルドアも注釈にこう書いています[3:1]

『吟遊詩人ビードルの物語』

「透明マント」と呼ばれるものは、一般的に完全無欠ではない。破れることもあり、古くなれば半透明になったり、透明にする呪文の効果が弱まったり、「現れ呪文」で解除されたりすることもある。だからこそ、隠れたり姿を隠したりするために多くの魔法使いたちが最初に使うのは、「目くらまし呪文」なのだ。アルバス・ダンブルドアは、「目くらまし呪文」の達人であり、マントなしで完全に姿を隠すことができた。

そのため、姿を隠す手段としてまず選ばれるのは目くらまし呪文です[3:2]。ハリーをプリベット通りから移送する夜も、ムーディは飛行中にマントが脱げることを理由に、マントではなく目くらまし術を選びました[6]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第3章「先発護衛隊」

「『目くらまし術』だ」ムーディが杖を上げた。「ルーピンが、おまえには透明マントがあると言っておったが、飛ぶときはマントが脱げてしまうだろう。こっちのほうがうまく隠してくれる。それ――」

それでも透明マントは、簡単に手に入る品ではありません。ハリーが包みを開けたとき、ロン・ウィーズリーは「とても珍しくて、とっても貴重なもの」だと言い、こういうマントを手に入れるためなら何でも差し出すと語りました[7]。ゼノフィリウスも、持ち主はそれだけで計り知れないほどの富を持つと述べています[2:3]

デミガイズは、この用途のために密輸の対象にもなりました。禁輸品や生物を扱う商売人フィニアス・フレッチャーは、透明マントを作るため新世界へデミガイズを持ち込もうとしています[5:1]

ムーディのマント

不死鳥の騎士団では、ムーディが複数の透明マントを持ち、仲間に貸していました。スタージス・ポドモアに貸した「一張羅」は返ってこないままで、ムーディは予備を探していたときに騎士団創立時の写真を見つけています[1:1]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第9章「ウィーズリーおばさんの嘆き」

「不死鳥の騎士団創立メンバーだ」ムーディが唸るように言った。「昨夜、『透明マント』の予備を探しているとき見つけた。ポドモアが、礼儀知らずにも、わしの一張羅マントを返してよこさん……。みんなが見たがるだろうと思ってな」

そのポドモアが神秘部の扉を破ろうとして逮捕されると、二枚目のマントも一緒に失われました。以後、マンダンガス・フレッチャーは魔女に変装して用を足すようになります[8]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第17章「教育令第二十四号」

スタージスが捕まったとき、ムーディの二枚目の『透明マント』もなくなってしまったので、ダングは近ごろ魔女に変装することが多くなってね

死の秘宝の透明マント

三人兄弟の物語

秘宝としてのマントの由来は、『吟遊詩人ビードルの物語』所収の「三人兄弟の物語」に語られています。「死」が三人の兄弟に褒美を与えると告げたとき、末の弟だけは「死」を信用しませんでした[3:3]

『吟遊詩人ビードルの物語』

さて次に、『死』は一番下の弟に何がほしいかとたずねました。三番目の弟は、兄弟の中で一番謙虚で、しかも一番賢い人でした。そして、『死』を信用していませんでした。そこでその弟は、『死』に跡をつけられずに、その場から先に進むことができるようなものがほしいと言いました。

そこで『死』はしぶしぶ、自分の持ち物の『透明マント』を与えました。

杖を得た長兄と石を得た次兄が命を落としたのに対し、末の弟だけは「死」に見つかりませんでした。高齢になったとき、弟はマントを脱いで息子に譲り、「死」を古い友人として迎えて世を去ります[3:4]

ほかのマントとの違い

ハーマイオニー・グレンジャーが、透明マントの類は珍しくとも存在すると指摘したのに対し、ゼノフィリウス・ラブグッドは、第三の秘宝はそれらとは別の品だと答えました[2:4]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第21章「三人兄弟の物語」

「ああ、しかし、ミス・グレンジャー、三番目の秘宝は本物の『透明マント』なのだ! つまり、旅行用のマントに『目くらまし術』をしっかり染み込ませたり、『眩惑の呪い』をかけたりした品じゃないし、葉隠れ獣の毛で織ったものでもない。この織物は、はじめのうちこそ隠してくれるが、何年か経つと色褪せて半透明になってしまう。本物のマントは、着ると間違いなく完全に透明にしてくれるし、永久に長持ちする。どんな呪文をかけても見通せないし、いつも間違いなく隠してくれる。ミス・グレンジャー、そういうマントをこれまで何枚見たかね?」

ダンブルドアの整理はもう少し穏やかです。姿を隠しきる真の透明マントは珍しいながら実在するとしたうえで、「死のマント」の耐久性だけは類がないと書いています[3:5]。ビードルの時代から現在まで、それを発見したと主張した者はいませんでした[3:6]

『吟遊詩人ビードルの物語』

真の「透明マント」は、非常に珍しい品ではあるが、魔法界にいくつか実在する。

ゼノフィリウスの説明を聞いたとき、それと寸分違わぬ品が三人の手元にありました[2:5]。ハリーのマントは、七年近く魔法界で暮らしたあいだに同じものを見たことがない品でした[4:1]アルバス・ダンブルドアも、これまで見たことのないマントであり、非常に古く、すべてにおいて完璧だったと語っています[9]

マントの真の魔力は、所有者だけでなく他の者をも隠し、守れる点にあります[9:1]。ダンブルドアとゲラート・グリンデルバルドがマントをさほど話題にしなかったのは、二人ともマントなしで十分に姿を隠せたためでした[9:2]

隠しきれないとき

どんな呪文でも見通せないとはいえ、マントを着た姿が捉えられないわけではありません。

ムーディの魔法の目は、透明マントを見通します。監督生用浴室からの帰りに騙し階段へ足を突っ込んだハリーを見咎めたのは、その場でただ一人ムーディでした[10]

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第25章「玉子と目玉」

ハリーの心臓が激しく揺れた。ムーディは透明マントを見通す……ムーディだけがこの場の奇妙さを完全に見通せる……

忍びの地図も、マントの下にいる者の名を隠しません。地図には、透明マントの有無にかかわらず城内にいる人物の位置が示されます[10:1]

同じ場面で、ハリーはミセス・ノリスに見つかることを恐れ、透明マントが猫には効かないのではないかと考えています[10:2]。ハリーの推測であって、作中で確かめられてはいません。

ペベレル家からポッター家へ

キングズ・クロスでダンブルドアが語ったところによれば、マントは代々受け継がれてハリーの手に届きました[9:3]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章「キングズ・クロス」

「『マント』は、知ってのとおり父から息子へ、母から娘へと、何世代にもわたって受け継がれ、イグノタスの最後の子孫にたどり着いた。その子は、イグノタスと同じく『ゴドリックの谷』という村に生まれた」

ハリーがこの繋がりに気づいたのは、ゴドリックの谷の墓地で死の秘宝の印が刻まれたイグノタス・ペベレルの墓を見たあと、母リリーの手紙にダンブルドアがマントを借りているという記述を見つけたときでした[11][4:2]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第22章「死の秘宝」

「イグノタスは僕の先祖だ! 僕は三番目の弟の子孫なんだ! それで全部辻褄が合う!」

ダンブルドアがマントを借りていたのは、ジェームズが死の数日前にそれを見せたからでした[9:4]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章「キングズ・クロス」

ジェームズが、死の数日前に、わしにマントを見せてくれた。学生時代、ジェームズの悪戯がなぜ見つからずにすんだのか、それで大方の説明がついた! わしは、自分の目にしたものが信じられなかった。借り受けて調べてみたい、とジェームズに頼んだ。

ハリーは、マントがあっても両親が呪いを免れることはできなかっただろうと述べました。ヴォルデモートは二人の居場所を知っていたからです[9:5]

ハリーの手に

マントがハリーに返されたのは、ホグワーツで迎えた最初のクリスマスでした。差出人の名のない包みから、銀ねず色の布が滑り落ちます[7:1]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第12章「みぞの鏡」

ハリーは輝く銀色の布を床から拾い上げた。水を織物にしたような不思議な手触りだった。

添えられていた手紙には、風変わりな細長い文字でこう書かれていました[7:2]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第12章「みぞの鏡」

君のお父さんが亡くなる前にこれを私に預けた。

君に返す時が来たようだ。

上手に使いなさい。

メリークリスマス

その夜、ハリーはさっそくマントを着て、図書館の閲覧禁止の棚へニコラス・フラメルを調べに向かいました[7:3]

マントとともに

ホグワーツにいるあいだ、マントはハリーの規則破りを支え続けました。3年生のときは忍びの地図と併せ、隠し通路からホグズミードへ抜けるのに使っています[12]。4年生では、金の卵の謎を解くために監督生用浴室へ忍び込みました[10:3]

7年目の逃亡では、グリモールド・プレイス十二番地の出入りに欠かせない道具になり、魔法省へ潜入する際にも、ポリジュース薬で変身したうえでマントを重ねています[13][14]

禁じられた森へヴォルデモートに会いに行った道のりも、蘇りの石で呼び出した人々とともにマントの下を歩いたものでした[15]ホグワーツの戦いの最終盤では、マントに隠れたまま盾の呪文で仲間を守り、ヴォルデモートの前に進み出るときにようやくマントを脱いでいます[16]

その後

戦いのあと、ハリーはニワトコの杖を元の場所へ戻すと決め、蘇りの石は森に落としたまま探しに行かないと告げました。三つのうちマントだけは、手元に残しています[16:1]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第36章「誤算」

「でも、イグノタスの贈り物は持っているつもりです」

ハリーが言うと、ダンブルドアはにっこりした。

「もちろんハリー、きみが子孫に譲るまで、それは永久にきみのものじゃ!」

登場・言及箇所

透明マントは原作全7巻に登場します。以下は、品としての性質・来歴が語られる箇所と、使用場面の代表です。

脚注


  1. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第9章「ウィーズリーおばさんの嘆き」 ↩︎ ↩︎

  2. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第21章「三人兄弟の物語」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『吟遊詩人ビードルの物語』「三人兄弟の物語」(ダンブルドアの注釈を含む) ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第22章「死の秘宝」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  5. 『幻の動物とその生息地』 ↩︎ ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第3章「先発護衛隊」 ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと賢者の石』第12章「みぞの鏡」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  8. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第17章「教育令第二十四号」 ↩︎

  9. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章「キングズ・クロス」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第25章「玉子と目玉」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  11. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第16章「ゴドリックの谷」 ↩︎

  12. 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第14章「スネイプの恨み」 ↩︎

  13. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第12章「魔法は力なり」 ↩︎

  14. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第13章「マグル生まれ登録委員会」 ↩︎

  15. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」 ↩︎

  16. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第36章「誤算」 ↩︎ ↩︎