憂いの篩

憂いの篩 (Pensieve) は、記憶や想いを頭から抜き出して蓄え、その中へ入って過去の場面を追体験できる石の水盆です。稀少な魔法道具で、扱えるのはごく上級の魔法使いに限られます。ホグワーツの校長室に置かれた一台は、ダンブルドアハリーにヴォルデモートの過去を見せる「記憶の授業」で重要な役割を果たします。

基本情報

名称: 憂いの篩 (Pensieve)
別名: ペンシーブ
種別: 記憶・想いを蓄え、追体験する魔法道具
外見: 縁にルーン文字が彫られた浅い石の水盆
所在: ホグワーツ魔法魔術学校 校長室(ほか個人所有のものもある)

外見

憂いの篩は、縁に見慣れない紋様やルーン文字が彫られた浅い石の水盆です。中を満たすのは、液体とも気体ともつかない白みがかった銀色の物質で、絶え間なく動いています[1]

使い方と仕組み

憂いの篩は、記憶や考えが多すぎて頭に収まりきらないとき、余分な想いを抜き取って蓄えておくために使われます。杖の先を自分のこめかみに当てて想いを引き出すと、それは銀色の糸状のものとして杖に付き、水盆に加えられます。こうして形にしておくと、物事のパターンやつながりを見つけやすくなります。

「これか? これはの、ペンシーブ、『憂いの篩』じゃ」ダンブルドアが答えた。……「溢れた想いを、頭の中からこの中に注ぎ込んで、時間のあるときにゆっくり吟味するのじゃよ。このような物質にしておくとな、わかると思うが、どんな行動様式なのか、関連性なのかがわかりやすくなるのじゃ」[1:1]

中身に顔を近づけて触れると、記憶そのものの中へ物理的に引き込まれます。落下の感覚は、氷のように冷たく真っ暗な渦に吸い込まれるようなものです。記憶の中に入った者は、その場面に登場する人々からは見えず聞こえない存在として、自由に動き回って観察できます[1:2]

危険性

憂いの篩は稀少な道具で、扱えるのはごく上級の魔法使いに限られます。危険視される理由は、記憶や思考を支配する力にあります。隠し事のある者や過去を恥じる者、秘密を守りたい者は、この道具を警戒します[2]

他人の憂いの篩を許可なく覗くことも可能ですが、危険と隣り合わせの行為です。ハリーは好奇心に負けて無断でスネイプの憂いの篩に飛び込み、父ジェームズがスネイプをいじめる「スネイプの最悪の記憶」を目撃してしまいます[3]。これと対照的に、ダンブルドアとの「記憶の授業」では、初めて正式な許可を得たうえで一緒に憂いの篩へ入りました[4]

ホグワーツの憂いの篩

慣例として、魔法使いの憂いの篩は杖と同様に本人と共に埋葬される、非常に個人的な品とされます。しかしホグワーツの憂いの篩は例外で、特定の個人ではなく学校そのものに帰属します。歴代の校長・校長先生が思い出を記憶として残していく、貴重な参考資料の集積となっているのです[2:1]

ホグワーツの憂いの篩は精巧に彫られた石製で、学校の創立以前にさかのぼる古代の遺物であることを示す、改変されたサクソン人のルーン文字が刻まれています。創立者たちが学校を建てる場所に半ば埋もれていたのを発見したという、確証のない伝説も伝わっています[2:2]

作中での登場

名前の由来

英語名 Pensieve は、「物思いにふける」を意味する pensive の同音語であると同時に、「ふるい」を意味する sieve との語呂合わせにもなっています。想いや記憶の集まりから意味をふるい分けるという、この道具の働きを示唆しています[2:3]。日本語版では「憂いの篩」と訳され、章題では「ペンシーブ」の名も併用されています。

登場・言及箇所

脚注


  1. 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第30章「ペンシーブ」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「憂いの篩」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第28章「スネイプの最悪の記憶」 ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第10章「ゴーントの家」 ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第23章「ホークラックス」 ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第33章「プリンスの物語」 ↩︎