グールお化け
グールお化け (ghoul) は、魔法使いの家の屋根裏部屋や納屋に棲みつく生き物です。うめき声を上げたり物を投げたりはするものの危害を加えることはほとんどなく、ロン・ウィーズリーの家「隠れ穴」でも、屋根裏の住人として当たり前のように受け入れられていました。
原作日本語版では、この生き物を指す語が二通りに訳し分けられています。『秘密の部屋』と『死の秘宝』では「屋根裏お化け」(『死の秘宝』第6章の章題も「パジャマ姿の屋根裏お化け」)、『炎のゴブレット』第10章と『不死鳥の騎士団』第6章では「グールお化け」です。『幻の動物とその生息地』の項目名は「グールお化け」で、本文には「グール」も現れます。この記事の見出しには hp-glossary の訳語である「グールお化け」を採り、引用は原作の表記のままにしています。
姿と性質
『幻の動物とその生息地』は、この生き物を次のように説明しています[1:3]。
グールは醜いが、とくに危険な生き物というわけではない。ぬるぬるした出っ歯の人食い鬼に似た姿をしており、普通は魔法使いの家の屋根裏部屋や納屋に住み、クモや蛾を食する。うめき声を上げたり、ときどき周りに物を投げつけるが、本質的には単純で、最悪の場合でも、せいぜい出くわした者に向かって威嚇的にうなる程度である。魔法生物規制管理部にはグール機動隊があり、マグルの手にわたった住居に棲みついているグールお化けを除去する仕事をしている。しかし魔法使いの家では、グールはしばしば話の種になったり、家族のペットになったりすることもある。
同書のハイドビハインドの項によれば、密輸業者フィニアス・フレッチャーの船に密航していたグールお化けが、逃げ出したデミガイズと交わって生まれたのがハイドビハインドだとされます[2]。
隠れ穴の屋根裏お化け
ハリー・ポッターが初めて「隠れ穴」に泊まった夏、ジョージ・ウィーズリーは、自分の家に屋敷しもべ妖精がいない理由を説明するなかでこの生き物を挙げました[3]。
「あぁ、ママなんか、アイロンかけする『しもべ妖精』がいたらいいのにって、しょっちゅう言ってるよ。だけど家にいるのは、やかましい屋根裏お化けと、庭に巣食ってる小人だけだもんな。『屋敷しもべ妖精』は、大きな館とか城とか、そういうところにいるんだ。俺たちの家なんかには、絶対に来やしないさ……」とジョージ。
ロンの部屋は、その屋根裏のすぐ下にありました[3:1]。
「君のマグルのとこの部屋みたいじゃないけど。それに、僕の部屋、屋根裏お化けの真下だし。あいつ、しょっちゅうパイプを叩いたり、呻いたりするんだ……」
音を立てるのは、家が静かになりすぎたときでした[4]。
屋根裏お化けは、家の中が静かすぎると思えば、喚くし、パイプを落とすし、フレッドとジョージの部屋から小さな爆発音があがっても、みんなあたりまえという顔をしていた。
二年後、ハリーがふたたび「隠れ穴」に滞在した嵐の夜にも、同じ声が聞こえています[5]。
家の最上階では雨音がいっそう激しく響き、それにヒューヒューと風が鳴き唸る音、その上、屋根裏に棲むグールお化けの喚き声がときどき加わった。
『日刊予言者新聞』がウィーズリー家を槍玉に挙げた記事のなかでは、モリー・ウィーズリーが記者を追い払う脅し文句としてこの生き物の名を出したと伝えられました[6]。
ウィーズリー氏のコメントは取ることができなかったが、氏の妻は記者団に対し、「とっとと消えないと、家の屋根裏お化けをけしかけるわよ」と発言した。
ロンの身代わり
『死の秘宝』では、隠れ穴の屋根裏お化けが物語のなかで役目を負います。ハリーがロン・ハーマイオニーとともに旅立つにあたり、ロンが学校に戻らない理由を作る必要が生じたためです。ハリーがその姿を実際に見たのは、このときが初めてでした[7]。
ロンのあとから短い梯子を数段上ると、狭い屋根裏部屋に出た。頭と肩をその部屋に突き出したところで、一メートルほど先に身を丸めている生き物の姿がハリーの目に止まった。薄暗い部屋で大口を開けてぐっすり寝ている。
生き物はロンのお古のパジャマを着せられ、体中に赤紫の疱疹の炎症が浮いていました[7:1]。
ハリーは少し吐き気を催しながら、生き物をしげしげと眺めた。形も大きさも人間並みだし、暗闇に目が慣れてよく見ると、着ているのはロンのパジャマのお古だと明らかにわかる。普通の屋根裏お化けは、たしか禿げてヌルヌルした生き物だったはずだ、とハリーは思った。こんなに髪の毛が多いはずはないし、体中に赤紫の疱疹の炎症があるはずもない。
姿を変えたのはフレッドとジョージで、ロン自身が計画を説明しています[7:2]。
「僕の家族を全員隠すわけにはいかない。それじゃあんまり怪しすぎるし、全員が仕事をやめるわけにはいかない」ロンが言った。「そこで、僕が黒斑病で重体だ、だから学校にも戻れない、という話をでっち上げる。誰かが調査に来たら、パパとママが、できものだらけで僕のベッドに寝ている屋根裏お化けを見せる。黒斑病はすごく伝染るんだ。だから連中はそばに寄りたがらない。やつが話せなくたって問題ないんだ。だって、菌が喉元まで広がったら、当然話せないんだから」
ロンは、自分たちが発ったあとは屋根裏お化けが自分の部屋に住むことになる、とも言い添えました[7:3]。
結婚式が襲撃されたあと死喰い人が「隠れ穴」を調べにきたときの様子を、リーマス・ルーピンが伝えています[8]。
「屋根裏お化けを発見したが、あまりそばまでは近づきたがらなかった――そして、残っていた者たちを、何時間もかけて尋問した。君に関する情報を得ようとしたんだよ、ハリー。しかし、もちろん騎士団の者以外は、君が『隠れ穴』にいたことを知らなかったんだ」
グリモールド・プレイス十二番地のグール
屋敷の大掃除が続いていたあいだ、ニンファドーラ・トンクスが上階のトイレで一匹を見つけています[9]。
トンクスが手伝った日の午後は、上階のトイレをうろついていた年老いたグールお化けを発見した記念すべき午後になった。
カメレオンお化け
秘密の部屋の怪物の正体を推理する場面で、ハーマイオニーは「カメレオンお化け」の名を挙げています[10]。
「でなきゃ、何かに変装してるわね――鎧とかなんかに。『カメレオンお化け』の話、読んだことあるわ……」
原作がカメレオンお化けに触れるのはこの一言だけで、グールお化けとの関係も語られていません。
「カメレオンお化け」の英語は Chameleon Ghoul で、グールお化け (ghoul) と同じ語を含みます。日本語版ではそれぞれ「カメレオンお化け」「グールお化け」と訳されているため、共通する部分は「お化け」だけになっています。
『グールお化けとのクールな散策』
ギルデロイ・ロックハートの著書のひとつに、この生き物を題名に冠したものがあります。ホグワーツの二年生が買いそろえる教科書の一覧に並んでおり[4:1]、ハーマイオニーは禁書の閲覧許可を得るために、この本を持ち出してロックハートに取り入りました[11]。
「本当にすばらしいわ。先生が最後のグールを、茶濾しで引っ掛けるやり方なんて……」
同じ本は、ハグリッドが連行された夜にも顔を出します。得意げに振る舞うロックハートに苛立ったハリーが、これを投げつけたい衝動をこらえる場面です[12]。
登場・言及箇所
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- 第3章「隠れ穴」
- 第4章「フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店」
- 第10章「狂ったブラッジャー」
- 第11章「決闘クラブ」
- 第12章「ポリジュース薬」
- 第15章「アラゴグ」
- 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
- 第10章「魔法省スキャンダル」
- 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- 第6章「高貴なる由緒正しきブラック家」
- 『ハリー・ポッターと死の秘宝』
- 第6章「パジャマ姿の屋根裏お化け」
- 第11章「賄賂」
- 『幻の動物とその生息地』グールお化けの項/ハイドビハインドの項