肥らせ呪文

肥らせ呪文 (Engorgement Charm) は、対象を膨らませて大きくする呪文です。呪文は「エンゴージオ」。縮めるほうを受け持つレデュシオと対になっており、この二つは組にして習うものとされています[1]

基本情報

呪文: エンゴージオ(Engorgio)/肥大せよ
別名: 肥らせ魔法[2]/肥らせ術[3]
分類: 呪文(charm)
効果: 対象を膨らませて大きくする
杖の動き: 上向きの矢印を描く[1:1]
対になる呪文: レデュシオ(縮める)[1:2]

メモ 訳語のゆれ

唱え言葉「エンゴージオ」の表記は原作の日本語版で一貫していますが、呪文そのものの名前(Engorgement Charm)は訳が揃っていません。『秘密の部屋』第7章と『幻の動物とその生息地』は「肥らせ魔法」、『炎のゴブレット』第4章は「肥らせ術」、同第23章と『吟遊詩人ビードルの物語』『呪いの子』は「肥らせ呪文」です。この記事の見出しには、用例のもっとも多い「肥らせ呪文」を採り、引用はそれぞれの出典の表記のままにしています。

効果

杖を向けて唱えると、対象が膨らんで大きくなります。『呪いの子』でアルバス・ポッターが洗面台の石鹸にかけた場面では、石鹸は一度で四倍の大きさになりました[4]。一方、ハリー・ポッターが自分のものでない杖で試したときには、一度目はクモが軽く跳ねただけで、二度目にようやく少し大きくなっています[5]

生き物にもかかります。授業の実演ではクモがタランチュラより大きくなり[6]、『呪いの子』では人にかけられて、体が膨らみ続けました[7]

J.K. ローリングがテキストを執筆したPS3ゲーム「ブックオブスペルズ」は、この呪文とレデュシオを第2章で組にして扱っています。この項目の日本語版のテキストは確認できていないため、以下は原文を示したうえで訳を添えています[1:3]

PS3ゲーム「ブックオブスペルズ」第2章「Engorgement & Shrinking Charms」

These straightforward but surprisingly dangerous charms cause certain things to swell or shrink. You will be learning both charms together, so that you can always undo an over-enthusiastic cast.

(この単純ながら意外に危険な呪文は、あるものを膨らませたり縮めたりする。二つの呪文はあわせて習うことになる。勢い余ってかけてしまっても、必ず元に戻せるようにするためである)

同書によれば、膨らませるときの杖の動きは上向きの矢印を描くもので、縮めるときは下向きになります[1:4]

使用例

巨大なかぼちゃ

ハリーたちが2年生の秋にルビウス・ハグリッドの小屋を訪ねたとき、小屋の裏の畑には、一つひとつが大岩のようなかぼちゃが十数個ありました。肥料は何かと聞かれたハグリッドは、誰もいないことを確かめてから「ちーっと手助けしてやっとる」とだけ答えます。壁に立てかけられたピンクの花模様の傘に気づいたハリーの隣で、ハーマイオニー・グレンジャーが名前を言い当てました[2:1]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第7章「穢れた血と幽かな声」

「『肥らせ魔法』じゃない? とにかく、ハグリッドったら、とっても上手にやったわよね」

ダドリーの舌

ハリーを迎えに来たアーサー・ウィーズリーたちがダーズリー家を発とうとしたとき、ダドリー・ダーズリーが床に落ちていたヌガーを食べ、舌が三十センチほども突き出しました。パニックに陥った一家に、ウィーズリー氏は息子のフレッドの仕業だと明かし、元に戻せると訴えます[3:1]

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第4章「再び「隠れ穴」へ」

「簡単な処理ですよ――ヌガーなんです――息子のフレッドが――しょうのないやんちゃ者で――しかし、単純な『肥らせ術』です――まあ、私はそうじゃないかと……どうかお願いです。元に戻せますから――」

ウィーズリー氏自身が「まあ、私はそうじゃないかと」と付け加えているとおり、これは断定ではありません。

「許されざる呪文」の授業

4年生の闇の魔術に対する防衛術の授業で、ムーディは磔の呪文を実演するにあたり、クモを大きくする必要があると言って杖を向けました[6:1]

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第14章「許されざる呪文」

「エンゴージオ! 肥大せよ!」

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第14章「許されざる呪文」

クモが膨れ上がった。いまやタランチュラより大きい。

このあとムーディはクモに磔の呪文をかけ、ハーマイオニーの制止を受けて杖を離してから、「レデュシオ! 縮め!」と唱えて元の大きさに戻しました[6:2]

借り物の杖で

『死の秘宝』の逃亡生活の途中、ハリーは前の晩にロン・ウィーズリーからもらった杖を使っていました。ハーマイオニーがリンボクの木でできていると判断した杖です。凍った巣の上のクモを的にして試したときの効きは、はかばかしくありません[5:1]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第20章「ゼノフィリウス・ラブグッド」

「エンゴージオ 肥大せよ」クモはちょっと震え、巣の上で少し跳ねた。ハリーは、もう一度やってみた。こんどはクモが少し大きくなった。

ロンに止められたハリーは「レデュシオ 縮め」と唱えますが、クモは縮みませんでした。その日に試したどの簡単な呪文も、以前の杖に比べて効きが弱く感じられたと書かれています[5:2]

三校対抗試合の妨害

『呪いの子』では、アルバス・ポッターとスコーピウス・マルフォイが逆転時計で三大魔法学校対抗試合に戻り、第二の課題でセドリック・ディゴリーを妨害する計画を立てます。二人は女子トイレの洗面台の石鹸で効き目を確かめました[4:1]

『ハリー・ポッターと呪いの子』第二幕第19場

アルバスがトイレのむこう側から稲妻のような呪文を放ち、それが杖の先から洗面台まで飛んでいく。石鹸は四倍の大きさに膨らむ。

泡頭の呪文を使って湖に潜ったセドリックに、二人は水中で同時に呪文をかけます[7:1]

『ハリー・ポッターと呪いの子』第二幕第20場

セドリック・ディゴリーが、水中を泳いで二人に近づいてくる。顔は大きな泡におおわれている。アルバスとスコーピウスは同時に杖を上げ、水の中で「肥らせ呪文」を放つ。

セドリックの体は膨らみ続け、なす術もなく水面へ浮き上がって競技から脱落しました[7:2]

生き物への使用

1832年、オハイオ州シンシナティの魔法使いアベル・ツリートップスは、ワンプス・キャットを手なずけて魔法使いの家の護衛をさせる方法の特許を取ったと主張しましたが、抜き打ち調査で正体が知れました[8]

『幻の動物とその生息地』ワンプス・キャットの項

しかし、マクーザがツリートップスの家を抜き打ち調査した際、彼がニーズルに「肥らせ魔法」を掛けているところを見つけ、インチキが暴露された。

『吟遊詩人ビードルの物語』に付されたアルバス・ダンブルドアの注釈は、ホグワーツで上演されかけた「豊かな幸運の泉」の寸劇の顛末を伝えています。シルバヌス・ケトルバーン先生が用意した巨大な「いも虫」は、実は肥らせ呪文をかけられたアッシュワインダーで、幕が上がる前に爆発し、大広間を煙と舞台装置の残骸で埋めました[9]。ダンブルドアはその生き物について、注でこう釘を刺しています[9:1]

『吟遊詩人ビードルの物語』「豊かな幸運の泉」(ダンブルドアの注釈)

この生物を勝手に木張りの部屋に持ち込むべきではないし、決して「肥らせ呪文」をかけてはならない。

誤った推測

ハグリッドの母親が巨人だと知った夜、ロンは、その体格をこの呪文で説明できると思い込んでいたことをハリーに打ち明けました[10]

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第23章「クリスマス・ダンスパーティ」

「僕、ハグリッドが子供のとき、たまたま悪質な『肥らせ呪文』に当たるかなんかしたんじゃないかって、そう思ってた。僕、そのこと言いたくなかったんだけど……」

防御

『呪いの子』の第三幕で、スコーピウスから三大魔法学校対抗試合の妨害に使った呪文を聞かされたロンは、防ぎ方をその場で答えています[11]

『ハリー・ポッターと呪いの子』第三幕第7場

ロン 簡単な「盾の呪文」を使えば、両方とも妨害して無効にできる。

登場・言及箇所

脚注


  1. PS3ゲーム「ブックオブスペルズ」(2012年)第2章「Engorgement & Shrinking Charms」。J.K. ローリング執筆のゲーム内テキスト ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第7章「穢れた血と幽かな声」 ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第4章「再び「隠れ穴」へ」 ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと呪いの子』第二幕第19場 ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第20章「ゼノフィリウス・ラブグッド」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第14章「許されざる呪文」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと呪いの子』第二幕第20場 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  8. 『幻の動物とその生息地』ワンプス・キャットの項 ↩︎

  9. 『吟遊詩人ビードルの物語』「豊かな幸運の泉」(ダンブルドアの注釈) ↩︎ ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第23章「クリスマス・ダンスパーティ」 ↩︎

  11. 『ハリー・ポッターと呪いの子』第三幕第7場 ↩︎