ケンタウルス
ケンタウルス (Centaur) は、人間の頭・胴体・腕を馬の胴体につないだ姿の魔法生物です[1]。森に棲み、10頭から50頭ほどの群れで暮らします[1:1]。知性を持ち言葉を話しますが、自らの求めによって魔法省の分類では「動物」に置かれています[1:2]。魔法使いにもマグルにも等しく不信を抱きます[1:3]。天に逆らわないと誓った身であることを理由に人間の事情への関与を退ける者があり、人間のために働いたフィレンツェは群れから追放されました[2][3]。禁じられた森に棲む群れには、フィレンツェ、ベイン、ロナン、マゴリアンがいます[2:1][4]。
姿と群れ
人間の頭・胴体・腕が、馬の胴体につながっています。馬体の色は5〜6種類あり、一様ではありません[1:9]。森に棲み、もともとはギリシャ原産だといわれますが、現在はヨーロッパ各地に群れがあります。ひとつの群れは10頭から50頭ほどです[1:10]。
知恵と技
魔法のいやし、占い、洋弓、天文学に精通しているという評判があります[1:11]。弓は森でも携えられており、1996年に禁じられた森でハグリッドの前に現れたマゴリアンも、矢の詰まった矢立てと長弓を両肩に引っ掛けていました[4:1]。
天体の動きから読み取るケンタウルスの知恵は、人間の占いとは別のものです。1996年にホグワーツの占い学教師となったフィレンツェは、最初の授業で、前任のシビル・トレローニーの予見に触れながらこう説明しました[3:1]。
「しかしあの方は、ヒトが予言と呼んでいる、自己満足の戯言に大方の時間を浪費している。私は、個人的なものや偏見を離れた、ケンタウルスの叡智を説明するためにここにいるのです。我々が空を眺めるのは、そこに時折記されている、邪悪なものや変化の大きな潮流を見るためです。我々がいま見ているものが何であるかがはっきりするまでに、十年もの歳月を要することがあります」
人間の側からの評価は一様ではありません。1997年、フィレンツェと占い学のクラスを分担していたトレローニーは、フィレンツェを「駄馬」と呼び、ケンタウルスはカード占いを何も知らないと述べています[5]。
「ヒトたる存在」と「動物」
知性を持ち言葉も話すため、厳密には「動物」と呼べる生き物ではありません。それでも魔法省の分類上「動物」に置かれているのは、ケンタウルス自身がそう求めたからです[1:12]。
きっかけは、「ヒトたる存在」の資格を誰に与えるかという線引きでした。鬼婆や吸血鬼も「ヒトたる存在」とされたことで、ケンタウルスは自分たちがそれらと同類に扱われることに異議を申し立て、魔法使いとは別に自分たちのことは自分たちで管理すると宣言します[6]。
魔法省はこの要求を受け入れました。魔法生物規制管理部の動物課にはケンタウルス担当室が置かれていますが、そこを利用したケンタウルスはいません[6:1]。
魔法生物規制管理部、動物課にケンタウルス担当室があるが、ケンタウルスがそこを利用したことはない。魔法省では「ケンタウルス室に送られる」というと、当の人物がまもなく解雇されるという意味の省内ジョークになっている
魔法省の危険度分類では、ケンタウルスはXXXXに置かれています。凶暴だからではありません[1:13]。
ケンタウルスがXXXX分類なのは、過度に攻撃的であるからではなく、充分な尊敬をもって待遇すべきゆえである。同じことがマーピープル(水中人)およびユニコーン(一角獣)にもあてはまる
魔法族の和の泉
魔法省アトリウムの噴水には、杖を掲げた魔法使いの黄金像を囲んで、魔女・ケンタウルス・小鬼・屋敷しもべ妖精の像が立っています。噴水脇の立て札には「魔法族の和の泉」とありました[7]。
その周りを囲むように、美しい魔女、ケンタウルス、小鬼、屋敷しもべ妖精の像がそれぞれ一体ずつ立っていた。ケンタウルス以下三体の像は、魔法使いと魔女を崇めるように見上げている。
1996年6月、神秘部から戻ったハリー・ポッターたちは、無人のアトリウムでこの噴水を再び目にします[8]。その直後、アトリウムで始まったアルバス・ダンブルドアとヴォルデモートの決闘で、弓を持つケンタウルス像は片腕を飛ばされ、続いてダンブルドアが動かした像の一体としてヴォルデモートに疾駆し、緑の閃光を受けて粉々に砕けました[9]。
人間との関わり
ケンタウルスはマグルを信用せず、それと同じくらい魔法使いも信用しません。両者をほとんど区別していないようです[1:14]。
1992年、禁じられた森でハリーを救い、自分の背に乗せようとしたフィレンツェを、ベインは激しく責めました。その言葉に、群れの誓いが出てきます[2:2]。
「君はこの子に何を話したんですか? フィレンツェ、忘れてはいけない。我々は天に逆らわないと誓った。惑星の動きから、何が起こるか読み取ったはずじゃないかね」
人間に仕える立場に置かれることも拒みます。占い学の最初の授業で、ハグリッドがケンタウルスを繁殖させたのかと生徒に問われたフィレンツェは、こう答えました[3:2]。
「ケンタウルスはヒト族の召し使いでも、慰み者でもない」
1996年6月、森でハリーを捕らえたケンタウルスは、人間を助けることはないと言い、こう続けました[10]。
「我々は孤高の種族だ。そのことを誇りにしている。おまえたちがここを立ち去った後、おまえたちの企てを我々が実行したなどと吹聴することを許しはしない!」
同じ場面で、別のケンタウルスは自分たちを「きれいなしゃべる馬」と見なす態度を退け、昔から存在する種族として魔法族の侵略も侮辱も許さず、その法律も優越も認めないと述べています[10:1]。
軽んじられたことへの反応は、魔法省の記録にも残っています。歴代でもっとも長く在任した魔法大臣ファリス・スペイヴィンは、ケンタウルスと幽霊と小人が酒場に入ってくるという自作の冗談の落ちに気分を害したケンタウルスに蹴られ、これを「暗殺未遂」として生き延びたと紹介されています[11]。
アンブリッジとの衝突
1996年6月、ハーマイオニー・グレンジャーはドローレス・アンブリッジを禁じられた森へ誘い込みました。四方八方から五十頭あまりのケンタウルスが現れると、アンブリッジは群れを「半獣」と呼び、ヒトに近い知能を持つ魔法生物による攻撃を扱う法令第十五号『B』を読み上げました。その「ヒトに近い知能」という言い方に、ケンタウルスたちは激怒します[10:2]。
「ヒトに近い知能?」マゴリアンが繰り返した。ベインや他の数頭が激怒して唸り、蹄で地を掻いていた。「人間! 我々はそれが非常な屈辱だと考える! 我々の知能は、ありがたいことに、おまえたちのそれをはるかに凌駕している」
魔法省が一定の区画に棲むことを許しているのだとアンブリッジが言い返すと、その頭すれすれに矢が飛びました。アンブリッジがマゴリアンをロープで縛ったところで群れが襲いかかり、彼女は叫びながら連れ去られました[10:3]。
「汚らわしい半獣!」アンブリッジは両手でがっちり頭を覆いながら叫んだ。「けだもの! 手に負えない動物め!」
アンブリッジは、単身森に乗り込んだダンブルドアによって連れ戻されました[12]。同じ年の夏、ダンブルドアはこの一件をホラス・スラグホーンに引き合いに出し、あなたなら森にずかずか踏み入って怒ったケンタウルスたちを「汚らわしい半獣」呼ばわりするようなまねはするまい、と述べています[13]。
J.K. ローリングは、アンブリッジが完全な人間ではないものに恐怖を抱いており、ハグリッドへの嫌悪とケンタウルスへの恐怖はそこから来ていると書いています[14]。
ダンブルドアの葬儀
1997年6月、ホグワーツで営まれたダンブルドアの葬儀にも、ケンタウルスたちが現れました。人目に触れるところには出ず、弓を脇に抱えて半ば森影に隠れ、じっと立ち尽くしたまま参列者を見つめています[15]。式の終わりには、参列者に届かない矢の雨が降りました[15:1]。
天から雨のように矢が降り注ぎ、再び衝撃の悲鳴が上がった。しかし矢は参列者から遥かに離れたところに落ちた。それがケンタウルスの死者への表敬の礼なのだと、ハリーにはわかった。ケンタウルスは参列者に尻尾を向け、涼しい木々の中へと戻っていった。
ホグワーツの戦いと森の帰属
1998年5月のホグワーツの戦いで、森のケンタウルスたちは当初、戦闘に加わりませんでした。死んだと思われたハリーを抱えて森を出る行進の途中、ハグリッドはケンタウルスたちに向かって叫びます[16]。
「満足だろうな、臆病者の駄馬どもが。おまえたちは戦わんかったんだからな? 満足か、ハリー・ポッターが――死――死んで……?」
しかし城での戦いの最終局面で、群れは突撃し、死喰い人を蹴散らしました。ベイン、ロナン、マゴリアンも蹄の音も高く大広間に飛び込んでいます[16:1]。
群れが加勢に転じた経緯は語られていません。
戦いのあと、森はケンタウルスの土地と定められました。『ハリー・ポッターと呪いの子』で、行方不明の息子を捜して森に入ったハリーの前に現れたベインは、こう告げます[17]。
ベイン 私は自分の役割を果たした。しかし我が群れとその名誉のためだ。君たちのためではない。あの戦いのあと、この森はケンタウルスの土地だとみなされている。そして君は我々の土地にいる――許しを得ずに――ならば、君は我々の敵だ。
そのうえでベインは、ケンタウルスはさらなる戦いを欲しないと断り、星に見たものをハリーに伝えました[17:1]。
登場・言及箇所
- 『幻の動物とその生息地』
- 序論「魔法動物とは何か?」
- ケンタウルスの項
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』
- 第15章「禁じられた森」
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- 第15章「アラゴグ」(ハリーの言及)
- 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- 第7章「魔法省」
- 第9章「ウィーズリーおばさんの嘆き」(ハリーの内心の言及)
- 第27章「ケンタウルスと密告者」
- 第30章「グロウプ」
- 第33章「闘争と逃走」
- 第34章「神秘部」
- 第36章「「あの人」が恐れた唯一の人物」
- 第38章「二度目の戦いへ」
- 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- 第4章「ホラス・スラグホーン」
- 第25章「盗聴された予見者」(トレローニー先生の言及)
- 第30章「白い墓」
- 『ハリー・ポッターと死の秘宝』
- 第36章「誤算」
- 『ハリー・ポッターと呪いの子』第二幕
- ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「ドローレス・アンブリッジ」
- ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「魔法省」(歴代魔法大臣の一覧)
脚注
『幻の動物とその生息地』ケンタウルスの項 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第25章「盗聴された予見者」 ↩︎
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第7章「魔法省」 ↩︎
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第34章「神秘部」 ↩︎
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第36章「「あの人」が恐れた唯一の人物」 ↩︎
ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「魔法省」(歴代魔法大臣の一覧) ↩︎
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第38章「二度目の戦いへ」 ↩︎
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第4章「ホラス・スラグホーン」 ↩︎
ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「ドローレス・アンブリッジ」 ↩︎