吸血鬼
吸血鬼 (vampire) は、魔法界に実在する生き物です。ホグワーツの闇の魔術に対する防衛術で学ぶ対象になっており[1]、『幻の動物とその生息地』の注記によれば、鬼婆とともに「ヒトたる存在」に分類されました[2]。ただし物語のうえで重要な役割は与えられておらず、ハリー・ポッターが小説のなかで実際に出会う吸血鬼はサングィニだけです[1:1]。
名前: 吸血鬼 (vampire)
分類: 魔法生物
魔法省の区分: 「ヒトたる存在」[2:1]
原作の表記: 「吸血鬼」。第3巻では「バンパイヤ」「バンパイア」のルビが振られる箇所がある
魔法界での扱い
『幻の動物とその生息地』の序論は、「ヒトたる存在」と「動物」の線引きをめぐる歴史を述べています。その注記によれば、鬼婆や吸血鬼が「ヒトたる存在」とされたことにケンタウルスが異議を申し立て、魔法使いとは別に自分たちのことは自分たちで管理すると宣言しました[2:2]。
ケンタウルスは、鬼婆や吸血鬼も「ヒトたる存在」となったことで、自分たちがそれらと同類扱いになることに異議を申し立て、魔法使いとは別に、自分たちのことは自分たちで管理すると宣言した。
魔法省の規制の対象でもあります。パーシー・ウィーズリーは、リータ・スキーターが鍋底の厚さなど詮索せずに吸血鬼の撲滅に力を入れるべきだと書いたことに腹を立て、その件は『非魔法使い半ヒト族の取り扱いに関するガイドライン』の第十二項に規定されていると反論しました[3]。
「先週なんか、鍋底の厚さの粗探しなんかで時間をむだにせず、バンパイア撲滅に力を入れるべきだなんて言ったんだ。そのことは『非魔法使い半ヒト族の取り扱いに関するガイドライン』の第十二項にはっきり規定してあるのに、まるで無視して――」
魔法族が語る吸血鬼
吸血鬼の話は、魔法使いたちの噂話のなかにたびたび現れます。ルビウス・ハグリッドは、ダイアゴン横丁でハリーに、闇の魔術に対する防衛術のクィレル先生が実地の経験を積む休暇のあいだに黒い森で吸血鬼に出会ったらしいと話しました[4]。
「ああ、そうだ。哀れなものよ。秀才なんだが。本を読んで研究しとった時はよかったんだが、一年間実地に経験を積むちゅうことで休暇を取ってな……どうやら黒い森で吸血鬼に出会ったらしい。その上鬼婆といやーなことがあったらしい……それ以来じゃ、人が変わってしもた。生徒を怖がるわ、自分の教えてる科目にもビクつくわ……さてと、俺の傘はどこかな?」
クィレルの教室ににんにくの強い匂いが漂っていたのは、ルーマニアで出会った吸血鬼を寄せつけないためだと生徒たちは噂していました[5]。
教室にはにんにくの強烈な匂いがプンプン漂っていた。噂では、これは先生がルーマニアで出会った吸血鬼を寄せつけないためで、いつまた襲れるかもしれないとビクビクしているらしい。
ハグリッド自身も、巨人を探す旅の道中、ミンスクのパブで吸血鬼と言い争いをしたと語っています[6]。
「そのあとは、俺たちも少しは魔法を使った。そんで、なかなかいい旅だった。ポーランドの国境で、狂ったトロール二匹に出っくわしたな。それからミンスクのパブで、俺は吸血鬼とちょいと言い争いをしたが、それ以外はまったくすいすいだった」
姿かたちの印象も語られています。夜の騎士バスで指名手配の記事を見たハリーは、蝋のように蒼白いシリウス・ブラックの顔が、防衛術の授業で見た吸血鬼の絵そのものだと感じました[7]。
ハリーは吸血鬼に出会ったことはなかったが、「闇の魔術に対する防衛術」のクラスでその絵を見たことがあった。蝋のように蒼白なブラックの顔は、まさに吸血鬼そのものだった。
ハニーデュークス菓子店には血の味のするロリポップが並んでおり、ハーマイオニー・グレンジャーはそれを吸血鬼用だろうと言いました[8]。
「ウー、だめ。ハリーはこんなものほしがらないわ。これって吸血鬼用だと思う」
新しい闇の魔術に対する防衛術の先生を予想する冗談の種にもなります。学年末、ディーン・トーマスは、次の先生は吸血鬼ではないかと言いました[9]。
「吸血鬼じゃないかな」ディーン・トーマスは、そのほうがありがたいと言わんばかりだ。
授業と教科書
吸血鬼はホグワーツの学習項目です。3年生のとき、リーマス・ルーピンは闇の魔術に対する防衛術で吸血鬼のレポートを課題に出しました[10]。
「ウーン――あとでね――僕、図書室に行ってルーピンの『吸血鬼』のレポートを書かなきゃ――」
2年生の教科書には、ギルデロイ・ロックハートの著書『バンパイアとバッチリ船旅』が指定されました[11]。ロックハートは授業で自著の劇的な場面を演じてみせ、たいていハリーを相手役に指名しました。ハリーが演じさせられた役のひとつが、ロックハートにやっつけられてからレタスしか食べなくなった吸血鬼です[12]。
ハリーがこれまでに無理やり演じさせられた役は、「おしゃべりの呪い」を解いてもらったトランシルバニアの田舎っぺ、鼻かぜをひいた雪男、ロックハートにやっつけられてからレタスしか食べなくなった吸血鬼などだった。
サングィニ
1996年12月、ホラス・スラグホーンがホグワーツで開いたクリスマス・パーティに、吸血鬼のサングィニが出席しました。連れてきたのは『血兄弟―吸血鬼たちとの日々』の著者エルドレド・ウォープルです[13]。
小柄でメガネをかけたウォープルは、ハリーの手をぐいとつかみ、熱烈に握手した。吸血鬼のサングィニは、背が高くやつれていて、眼の下に黒い隈があったが、首を傾けただけの挨拶だった。かなり退屈している様子だ。興味津々の女子生徒がその周りにガヤガヤ群がって、興奮していた。
ウォープルがハリーに伝記の執筆を持ちかけているあいだ、サングィニは飢えた目つきで女子生徒たちの群れににじり寄っていき、ウォープルに厳しい声で制止されました[13:1]。
物語のなかの吸血鬼
J.K. ローリングは、吸血鬼が『ハリー・ポッター』の世界に存在しながら物語上あまり重要な役割を果たしていない理由を、ポッターモアで説明しています。吸血鬼の神話はすでに文学や映画で繰り返し取り上げられていて自分が付け足せるものはほとんどないと感じたこと、そして吸血鬼が東欧の伝説であるのに対し、自分はハリーの敵役を英国の神話や伝承から得るよう心がけていたことを挙げました[1:2]。
「闇の魔術に対する防衛術」の授業で、ハリーたちが吸血鬼を研究する場面があるのを見てもわかるとおり、『ハリー・ポッター』の世界にも吸血鬼は存在していますが、物語上ではあまり重要な役割を果たしていません。吸血鬼にまつわる神話はあまりにも豊富で、文学や映画の題材としても、たびたび取り上げられているので、私としては自分がここに新たに付け足せることはほとんどないと感じてしまったのです。
同じ記事によれば、最も初期の創作ノートには、ホグワーツの最初の職員リストに「トロカー」という名の吸血鬼の教師がいました。トロカーとは、動脈や体の空洞に差し込んで体液を抜き取るのに使う、先の尖った導管のことです。この教師は担当教科を割り当てられないまま、早い段階で創作ノートから姿を消しました[1:3]。
読者のあいだには、セブルス・スネイプが吸血鬼ではないかという噂が根強くありました。J.K. ローリングはこれを否定しています[1:4]。
確かに彼は不健康なほど顔色が青白く、長く黒いマントをまとった姿が巨大なコウモリを思わせるという描写もありますが、実際にコウモリに変身することはありませんし、日中に城の外で彼を見かけることもあります。ホグワーツで首に刺し傷のある遺体が見つかったこともありません。
登場・言及箇所
- 『幻の動物とその生息地』
- 序論「魔法動物とは何か?」
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』
- 第5章「ダイアゴン横丁」
- 第8章「魔法薬の先生」
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- 第4章「フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店」
- 第10章「狂ったブラッジャー」
- 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
- 第3章「夜の騎士バス」
- 第10章「忍びの地図」
- 第14章「スネイプの恨み」
- 第22章「再びふくろう便」
- 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
- 第10章「魔法省スキャンダル」
- 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- 第20章「ハグリッドの物語」
- 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- 第15章「破れぬ誓い」
- ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「吸血鬼」
脚注
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第10章「魔法省スキャンダル」 ↩︎
『ハリー・ポッターと賢者の石』第5章「ダイアゴン横丁」 ↩︎
『ハリー・ポッターと賢者の石』第8章「魔法薬の先生」 ↩︎
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第20章「ハグリッドの物語」 ↩︎
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第3章「夜の騎士バス」 ↩︎
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第10章「忍びの地図」 ↩︎
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第22章「再びふくろう便」 ↩︎
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第14章「スネイプの恨み」 ↩︎
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第4章「フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店」 ↩︎
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第10章「狂ったブラッジャー」 ↩︎