灯消しライター
灯消しライター (Deluminator / Put-Outer) は、その場の明かりをすべて吸い取り、ひと押しで元に戻す力を持つ魔法の道具です[1]。銀のライターのような外見をしています[2]。アルバス・ダンブルドアの持ち物で、その死後、遺言によってロン・ウィーズリーに遺贈されました[1:1]。
外見
初めて姿を見せるのは、ダンブルドアがプリベット通りでマントの内ポケットから取り出した場面です[2:3]。
探していたものが内ポケットから出てきた。銀のライターのようだ。ふたをパチンと開け、高くかざして、カチッと鳴らした。
以後も銀の道具として書かれ[2:4]、ロンが受け取る場面でも銀のライターのように見えるものとして描かれます[1:5]。
魔法的性質
明かりを吸い取り、戻す
カチッと鳴らすたびに近くの明かりがひとつずつ消え、もう一度鳴らすと元に戻ります。プリベット通りでは十二回鳴らして街灯を全部消し、去り際に一回鳴らして戻しました[2:5]。
その力は、ロンが遺贈を受ける場面でまとめて説明されています[1:6]。
スクリムジョールは、巾着からハリーに見覚えのある物を取り出した。銀のライターのように見えるものだが、カチッと押すたびに、周囲の灯りを全部吸い取り、また元に戻す力を持っている。
使えるのはダンブルドアだけではありません。ハリーをダーズリー家から連れ出す夜、アラスター・ムーディは借り物のこれを使ってプリベット通りの街灯を消しました[3:1]。
「ダンブルドアから借りた」ムーディは「灯消しライター」をポケットにしまいながら唸るように言った。「これで、窓からマグルが覗いても大丈夫だろうが? さあ、行くぞ、急げ」
行き場を失った光の玉
吸い取られた明かりは光の玉として道具の中にとどまり、元の光源へ返すことができます。ムーディはグリモールド・プレイス十二番地に着いたとき、盗み取った街灯の明かりの玉を返しました[4]。
返す先が失われている場合、光の玉は宙に浮いたまま周囲を照らします。マルフォイの館の地下牢で、ロンはテントのランプから吸い取っていた光を放ちました[5]。
数秒後、カチッと音がして、テントのランプから吸い取った光の玉がいくつも地下牢に飛び出した。もともとの出所に戻ることができない光は、小さな太陽のようにあちこちに浮かび、地下牢には光があふれた。
声を伝え、持ち主を導く
灯消しライターの働きは、明かりの操作だけではありません。ハリーとハーマイオニーのもとを離れていたロンは、クリスマスの朝、ポケットの中からハーマイオニーの声を聞いています[6]。
「これは、灯を点けたり消したりするだけのものじゃない」ロンが言った。「どんな仕組みなのかわからないし、なぜそのときだけそうなって、ほかのときにはならなかったのかもわからないけど。だって、僕は、二人と離れてから、ずっと戻りたかったんだからね。でも、クリスマスの朝、とっても朝早くラジオを聞いていたんだ。そしたら、君の声が……君の声が聞こえた……」
鳴らすと部屋の灯りが消え、窓の外に青い光の球が現れました。ロンがそれに従いて庭へ出ると、光は胸に入ってきたといいます[6:1]。
「僕、それを感じたよ。熱かった。それで、僕の中に入ったとたん、僕は、何をすればいいかがわかったんだ。光が、僕の行くべきところに連れていってくれるんだって、わかったんだ。それで、僕は『姿くらまし』して、山間の斜面に現れた。あたり一面雪だった……」
この働きがダンブルドアの意図によるものかどうかは、本文には書かれていません。ロン自身は、自分が離脱することを見越しての遺贈だったと受け取っています[7]。
「――ダンブルドアは、僕が君を見捨てて逃げ出すことを知ってたに違いないよ」
ハリーはそれを言い直しました[7:1]。
「違うね」ハリーが訂正した。「ダンブルドアは、君がはじめからずっと戻りたいと思い続けるだろうって、わかっていたに違いないよ」
歴史
ダンブルドアの手にあったころ
ハリーがダーズリー家に届けられた夜、ダンブルドアはプリベット通りの街灯を消して暗闇を作り、去り際に明かりを戻しました[2:6]。
のちにハリーを迎えに来た先発護衛隊の夜には、ムーディがダンブルドアから借りて同じ通りの街灯を消しています。マグルの目を避けるためでした[3:2]。一行がグリモールド・プレイス十二番地に着くと、ムーディは奪った明かりを街灯へ返しました[4:1]。
ロンへの遺贈
ダンブルドアの死後、魔法大臣ルーファス・スクリムジョールが遺言を執行しました[1:7]。
「『アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアの遺言書』……そう、ここだ……『ロナルド・ビリウス・ウィーズリーに、〝灯消しライター〟を遺贈する。使うたびに、わしを想い出してほしい』」
スクリムジョールは、ダンブルドアがこれをどう使うと考えたのかとロンに問いただしました[1:8]。魔法省は引き渡しの前にこの道具を調べており、ハリーは大臣にそのことを当てこすっています[1:9]。
魔法省で何人かを、その任務に就けるべきじゃないんですか? 『灯消しライター』をひねくり回したり、アズカバンからの集団脱走を隠蔽したりする暇があるのなら。
その日のうちにアーサー・ウィーズリーが三度も四度も念入りに調べ、ロンは屋根裏部屋でこれを眺めていました[1:10]。
逃亡の旅のなかで
結婚式が襲われたあと、トテナム・コート通りのカフェで死喰い人と交戦した三人は、店を出るまでのあいだロンが明かりを消し、去り際に戻しました[8]。
グリモールド・プレイスで動きが取れずにいた時期には、ロンがポケットの中でこれをもてあそぶ癖がつき、灯りが点いたり消えたりするのをハーマイオニーが嫌がりました[9]。
いったん二人のもとを離れたロンが戻れたのは、この道具に導かれたからでした[6:2]。ロンはのちに「とっても役に立った」と言い、ゼノフィリウス・ラブグッドを訪ねようというハーマイオニーの案を支持しています[7:2]。
ハリーがヴォルデモートの名を口にして禁句に触れ、外から荒っぽい声が近づいてきたときには、ロンがテントのランプの明かりを消しました[10]。マルフォイの館の地下牢では、蓄えていた光で牢内を照らし、鍵の回る音がすると光を回収して暗闇に戻しています[5:1]。
夜明けの海を眺めながら、ハリーは頭の中のダンブルドアに語りかけました[11]。
あなたはロンに「灯消しライター」を与えた。あなたはロンを理解していた……あなたがロンに、戻るための手段を与えたのだ……。
舞台裏
英語版での呼称は、第1巻と第5巻では Put-Outer、第7巻では一貫して Deluminator です。日本語版はどちらも「灯消しライター」と訳しており、呼称の変化は訳文には現れません[3:3][1:11]。
登場・言及箇所
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』
- 第1章「生き残った男の子」
- 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- 第3章「先発護衛隊」
- 第4章「グリモールド・プレイス 十二番地」
- 『ハリー・ポッターと死の秘宝』
- 第7章「アルバス・ダンブルドアの遺言」
- 第9章「隠れ家」
- 第11章「賄賂」
- 第19章「銀色の牝鹿」
- 第20章「ゼノフィリウス・ラブグッド」
- 第22章「死の秘宝」
- 第23章「マルフォイの館」
- 第24章「杖作り」