吼えメール

吼えメール (Howler) は、差出人の声を魔法で拡大して届ける、赤い封筒に入った手紙です[1]。開封すると、声が本来の百倍の大きさに拡大されて響き渡ります[1:1]。ホグワーツの生徒が朝食の席で受け取る郵便物のなかでは、最悪のものです[2]

基本情報

名前: 吼えメール (Howler)
外見: 赤い封筒[1:2]
配達: ふくろうが運ぶ[1:3]
開封したとき: 差出人の声が魔法で百倍に拡大されて響き、読み終えると封筒は燃えて灰になる[1:4]
開封しなかったとき: 封筒が燃え上がり、燃える手紙から声が流れる[3]。すぐに開けなければ爆発する[4]

メモ 訳語のゆれ

原作7冊とポッターモアの記事本文は「吼えメール」と書いていますが、『ハリー・ポッターと呪いの子』の日本語版は「吠えメール」と表記しています。この記事の見出しには原作7冊の「吼えメール」を採り、引用はそれぞれの出典の表記のままにしています。

外見と開封

見た目は赤い封筒で、何も知らない者の目にはごく普通の手紙に映ります。しかし受け取る側は、封筒がいまにも爆発しそうなものとして扱います[1:5]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第6章「ギルデロイ・ロックハート」

ロンは赤い封筒のほうを指差している。ハリーが見ても別に普通のと変わりはない。しかし、ロンもネビルも、いまにも封筒が爆発しそうな目つきで見ている。

開封が遅れると、封筒の四隅から煙が上がりはじめます[1:6]。開けば差出人の声が大広間じゅうに響き、天井から埃が落ちるほどの音量になります[1:7]。声が止むと封筒は炎となって燃え上がり、灰になって残りません[1:8]

要する時間は短く、ネビル・ロングボトムは「ほんの数分で終わるから」と言って開封を促しています[1:9]

開封しなかった場合

開けずに済ませることはできません。ネビルは自分の経験から、無視するともっとひどいことになるとロン・ウィーズリーに警告しました[1:10]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第6章「ギルデロイ・ロックハート」

「開けないと、もっとひどいことになるよ。僕のばあちゃんも一度僕によこしたことがあるんだけど、ほっておいたら……」ネビルはゴクリと生唾を飲んだ。「ひどかったんだ」

魔法省で吼えメールの対応に追われたパーシー・ウィーズリーも、同じことを実務の側から述べています[4:1]

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第10章「魔法省スキャンダル」

「一週間ずっと火消し役だった。『吼えメール』が次々送られてくるんだからね。当然、すぐに開封しないと、『吼えメール』は爆発する。僕の机は焼け焦げだらけだし、いちばん上等の羽根ペンは灰になるし」

放っておかれた吼えメールは、封筒のまま燃え上がります。それでも声は失われず、燃えている手紙からメッセージが流れ出します[3:1]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第2章「ふくろうのつぶて」

テーブルの上で燃えている手紙から、恐ろしい声が流れてキッチン中に広がり、狭い部屋の中で反響した。

作中での使用

ロン・ウィーズリーに届いた吼えメール

ハリーとロンが空飛ぶ車でホグワーツに登校した翌日、ロンのもとに母モリー・ウィーズリーからの吼えメールが届きました[1:11]。一家のふくろうエロールがミルクの水差しに落ちて気を失い、その嘴に濡れた赤い封筒がくわえられていました。それを見たロンとネビルは、すぐにそれと察します。事情を知らないハリーが「『吼えメール』って何?」と尋ねたのが、この道具の初めての登場です[1:12]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第6章「ギルデロイ・ロックハート」

「……車を盗み出すなんて、退校処分になってもあたりまえです。首を洗って待ってらっしゃい。承知しませんからね。車がなくなっているのを見て、わたしとお父さまがどんな思いだったか、おまえはちょっとでも考えたんですか……」

声は皿もスプーンも揺らし、石の壁に反響しました。大広間にいた全員が、誰が吼えメールを受け取ったのかと見回すなか、ロンは椅子に縮こまって額だけをテーブルの上に出していました[1:13]

ネビル・ロングボトムに届いた吼えメール

グリフィンドール塔にシリウス・ブラックが侵入した事件は、ネビルがその週の合言葉を書き出して置き忘れたことが発端でした[5]。その二日後、ネビルの祖母オーガスタ・ロングボトムが孫に吼えメールを送ります[2:1]

『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第14章「スネイプの恨み」

ネビルは面目まるつぶれだった。マクゴナガル先生の怒りはすさまじく、今後いっさいホグズミードに行くことを禁じ、罰を与え、ネビルには合言葉を教えてはならない、とみんなに言い渡した。哀れなネビルは毎晩誰かが一緒に入れてくれるまで、談話室の外で待つはめになり、その間、警備のトロールがじろっじろっと胡散臭そうに横目でネビルを見た。しかし、それもこれも、ネビルのばあちゃんから届いたものに比べれば、物の数ではなかった。ブラック侵入の二日後、ばあちゃんは、朝食時に生徒が受け取る郵便物の中でも、最悪のものをネビルに送ってよこした。――「吼えメール」だ。

ネビルは封筒をつかんで大広間を走り出ました。爆発は玄関ホールで起こり、そこまで届く声で祖母が孫を叱りつけました[2:2]

『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第14章「スネイプの恨み」

言われるまでもなくネビルは封筒を引っつかみ、まるで爆弾を捧げ持つように腕を伸ばして手紙を持ち、全速力で大広間から出ていった。見ていたスリザリンのテーブルからは大爆笑が起こった。玄関ホールで吼えメールが爆発するのが聞こえてきた。――ネビルのばあちゃんの声が、魔法で百倍に拡大され、「なんたる恥さらし。一族の恥」とガミガミ怒鳴っている。

魔法省に殺到した吼えメール

クィディッチ・ワールドカップの警備をめぐる苦情は、吼えメールの形で魔法省に押し寄せました。壊された私物の弁償を求める送り主が相次ぎ、パーシー・ウィーズリーは一週間その処理に追われています[4:2]。個人あての嫌がらせだけでなく、役所への抗議の手段としても使われていたことがわかります。

ハーマイオニー・グレンジャーへの嫌がらせ

週刊魔女」に載ったリータ・スキーターの記事を真に受けた読者からは、ハーマイオニー・グレンジャーあてに嫌がらせの手紙が一週間届き続けました。そのなかには吼えメールも混じっていました[6]

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第28章「クラウチ氏の狂気」

嫌がらせメールはそれから一週間、途切れることなくハーマイオニーに届いた。ハグリッドに言われたとおり、ハーマイオニーはもう開封しなかったが、嫌がらせ屋の中には「吼えメール」を送ってくる者もいた。グリフィンドールのテーブルでメールが爆発し、大広間全体に聞こえるような音でハーマイオニーを侮辱した。

ペチュニア・ダーズリーに届いた吼えメール

吸魂鬼がリトル・ウィンジングに現れた夜、ペチュニア・ダーズリーあてに吼えメールが届きました[3:2]バーノン・ダーズリーがハリーを家から追い出そうとしていたその最中のことです。ペチュニアは封筒を開けられないまま逃げ道を探し、燃え上がった封筒を取り落としました。声はテーブルの上で燃えている手紙から流れ出しました[3:3]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第2章「ふくろうのつぶて」

「私の最後のあれを思い出せ。ペチュニア」

ペチュニアはこれを聞いたあと、ハリーを家に置くと宣言します[3:4]。差出人が誰なのかは、この時点では明かされません。ハリーはその夜、あの声は誰のものだったのかと考え込んでいます[7]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第3章「先発護衛隊」

それに、あの「吼えメール」は何だ。いったい何だったんだ? キッチン中に響いた、あの恐ろしい、脅すような声は誰の声だったんだ?

答えが出るのは同じ巻の終わりです。校長室で、アルバス・ダンブルドアが自分の送ったものだと認めました[8]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第37章「失われた予言」

「わしは」ダンブルドアが軽く頷きながら言った。「きみを引き取ることで契った約束を、おばさんに思い出させる必要があると思ったのじゃ。吸魂鬼の襲撃で、おばさんが、親代わりとしてきみを置いておくことの危険性に目覚めたかもしれぬと思ったのじゃ」

なお、フレッドとジョージが学校を去ったあと、ロンは自分のせいにされて母からまた吼えメールが来るのではないかと案じています[9]

『呪いの子』での言及

『ハリー・ポッターと呪いの子』では、アルバスとスコーピウスが時を変えてしまった世界の場面で、ロンが息子パンジュの起こした問題について語ります。この世界のロンは、直接学校へ出向くのではなく吼えメールで済ませたかったと言い、去り際には自分が吼えメールを送りつけられる前に帰ると口にします[10]

『ハリー・ポッターと呪いの子』第二幕第9場

ロン なんてこった。君はほんとにおかしくなってしまったのかね? とにかく、もう行くよ。私に「吠えメール」が来ないうちに。

魔法界の通信手段として

ポッターモアの記事「テクノロジー」は、魔法界がインターネットをさほど必要としない理由を説明するなかで、吼えメールを魔法界の通信手段の一つに数えています[11]

ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「テクノロジー」

また、フクロウ、暖炉の火、守護霊、吼えメール、魔法をかけた硬貨といった手段を使ったり、「姿現し」の術を使って直接訪ねることで、知人と意思の疎通をはかることもできます。

登場・言及箇所

脚注


  1. 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第6章「ギルデロイ・ロックハート」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第14章「スネイプの恨み」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第2章「ふくろうのつぶて」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第10章「魔法省スキャンダル」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第13章「グリフィンドール対レイブンクロー」 ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第28章「クラウチ氏の狂気」 ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第3章「先発護衛隊」 ↩︎

  8. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第37章「失われた予言」 ↩︎

  9. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第30章「グロウプ」 ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと呪いの子』第二幕第9場 ↩︎

  11. ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「テクノロジー」 ↩︎