金縛りの術

金縛りの術 (Body-Bind Curse) は、相手の全身を硬直させて動けなくする呪文です。呪文は「ペトリフィカス トタルス」で、原作日本語版では「石になれ」の言葉が添えられます。腕は体の脇に貼りつき、脚は閉じ、板のように固くなって倒れます[1]

基本情報

呪文: ペトリフィカス トタルス(Petrificus Totalus)/石になれ
分類: 呪い(curse)
効果: 相手の全身を硬直させ、身動きも発話もできなくする
初出: 『賢者の石』第16章

効果

杖を相手に向けて唱えると、両腕が体の脇に貼りつき、両足が閉じ、全身が固まって倒れます。かけられた者は口をきくことができず、動かせるのは目だけです[1:1]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第16章「仕掛けられた罠」

ネビルの両腕が体の脇にピチッと貼りつき、両足がパチッと閉じた。体が固くなり、その場でゆらゆらと揺れ、まるで一枚板のようにうつ伏せにバッタリ倒れた。

術は自然に解けるものではなく、解除されるまで続きます。天文台の塔でこの術をかけられたハリー・ポッターは、術者であるアルバス・ダンブルドアが死んだことによってはじめて動けるようになりました[2]。かけられた側が自力で破った例もあります[3]

呪文の言葉

呪文は「ペトリフィカス トタルス」です。原作日本語版では、これに「石になれ!」の言葉が添えられます[1:2]。効果そのものは「全身金縛り」とも呼ばれ、ハーマイオニー・グレンジャーは初めてこの呪文を使ったあと、自分がかけたものを「全身金縛り」と説明しました[1:3]

ポッターモアで紹介されたヴィンディクタス・ヴェリディアン著『呪いのかけ方、解き方』にも、この呪文が載っています[4]

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「全身金縛り」:杖をまっすぐ相手に向け、「ペトリフィカス・トタルス、石になれ!」と叫びます。

作中での使用

ネビル・ロングボトム(1992年)

ハリーたちが夜中に談話室を抜け出そうとしたとき、ネビル・ロングボトムがそれを止めようと立ちはだかりました。ハーマイオニーは謝りながら杖を構え、この呪文でネビルを動けなくします[1:4]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第16章「仕掛けられた罠」

「ネビル、ほんとに、ほんとにごめんなさい」

ハーマイオニーは杖を振り上げ、ネビルに杖の先を向けた。

「ペトリフィカス トタルス、石になれ!」

スネイプの記憶(1976年)

ハリーが憂いの篩で見たセブルス・スネイプの記憶のなかで、ジェームズ・ポッターに吊るし上げられたスネイプが起き上がろうとしたところへ、シリウス・ブラックがこの呪文をかけました[5]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第28章「スネイプの最悪の記憶」

しかし、シリウスが「ペトリフィカス トタルス! 石になれ!」と唱えると、スネイプはまた転倒して、一枚板のように固くなった。

神秘部の戦い(1996年)

神秘部で死喰い人に追い詰められたとき、ハリーは自分に杖を向けた死喰い人にこの呪文を放ちました[6]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第35章「ベールの彼方に」

両手も両足もぴたりと張りつき、死喰い人は、ハリーの足下の敷物の上に前のめりに倒れ、棒のように動かなくなった。

同じ場面で、ハーマイオニーを倒したアントニン・ドロホフにもこの呪文を当てています。ただしドロホフはのちに術が解け、再びハリーの前に現れました[6:1]

ホグワーツ特急(1996年)

6年生に上がる汽車のなかで、ドラコ・マルフォイは荷物棚に透明マントで隠れていたハリーを見つけ、この呪文で動けなくしました[7]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第7章「ナメクジ・クラブ」

マルフォイが不意を衝いてハリーに杖を向け、ハリーはたちまち金縛りにあった。

洞窟の亡者(1997年)

分霊箱を隠した洞窟で湖から這い上がってきた亡者に対して、ハリーはこの呪文を繰り返し使いました。数体は倒れたものの、亡者は次々と現れ、決定打にはなりませんでした[8]

天文台の塔(1997年)

塔の頂上で死喰い人が上がってくる足音を聞いたダンブルドアは、無言でハリーにこの呪文をかけ、透明マントの下で動けないようにしました。ハリーには何が起きたのか分からず、ダンブルドアはその一瞬のために自分を護る機会を失っています[9]。この場面では呪文の名は明かされません。

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第27章「稲妻に撃たれた塔」

ハリーはたちまち体が硬直して動かなくなり、まるで不安定な銅像のように倒れて、塔の防壁に支えられるのを感じた。動くことも口をきくこともできない。

正体が分かるのは次の章です。術が解けたとき、ハリーはそれが金縛りの術であったこと、そして解けたのは術者が死んだからにほかならないことを悟りました[2:1]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第28章「プリンスの逃亡」

ダンブルドアにかけられた「金縛りの術」が解けたときから、ハリーはもう望みがないことを知っていた。術者が死んだからこそ、術が解けたに違いない。

動けるようになったハリーは、塔から立ち去ろうとする四人目の死喰い人と、飛びかかってきたフェンリール・グレイバックに、この呪文を放ちました[2:2]

のちに病院棟で仲間たちにこの夜のことを語ったとき、ハリーは「ダンブルドアは僕を金縛りにしたんだ」と説明しています[10]

逃亡中の戦い(1997年-1998年)

トテナム・コート・ロードの喫茶店で襲われたとき、ハーマイオニーはベンチの下からこの呪文を唱えてドロホフを倒しました[11]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第9章「隠れ家」

「ペトリフィカス トタルス! 石になれ!」見えないところからハーマイオニーが叫んだ。死喰い人は石像のように固まり、割れたカップやコーヒー、テーブルの破片などの上にバリバリと音を立てて前のめりに倒れた。

ホグワーツの戦いでは、ロン・ウィーズリーが必要の部屋でクラッブに向けて放ちましたが、わずかに逸れました[12]。廊下の戦いでは、パーバティ・パチルがドロホフをこの呪文で倒しています[13]

ネビルへの仕打ち(1998年)

ヴォルデモートは、降伏を拒んだネビルにこの呪文をかけて動けなくし、その頭に組分け帽子を被せて燃やしました[3:1]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第36章「誤算」

ヴォルデモートが杖をネビルに向けると、ネビルの体が硬直した。そして、その頭に、目の下まですっぽり覆うように、無理やり帽子が被せられた。

援軍が到着した瞬間、ネビルは自力でこの術を破り、帽子から取り出した銀の剣でナギニの首を落としました[3:2]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第36章「誤算」

素早い滑らかな動きで、ネビルは自分にかけられていた「金縛りの術」を解いた。炎上していた帽子が落ち、ネビルはその奥から何か銀色の物を取り出した。輝くルビーの柄――。

比喩としての用法

効果の激しさから、驚愕して固まった様子のたとえにも使われます。1年目の学年末の饗宴でグリフィンドールの逆転優勝が告げられたとき、ドラコ・マルフォイの顔つきは金縛りの術をかけられたとき以上のものでした[14]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第17章「二つの顔をもつ男」

マルフォイは、「金縛りの術」をかけられたよりももっと、驚き、恐れおののいた顔をしていた。

フレッド・ウィーズリーは、ビルとフラーの結婚式の準備でローブを着せられながら、自分の結婚式では式が終わるまで母親にこの呪文をかけると言いました[15]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第8章「結婚式」

「俺が結婚するときは――」フレッドが、着ているローブの襟を引っ張りながら言った。「こんなばかげたことは、いっさいやらないぞ。みんな好きなものを着てくれ。俺は、式が終わるまでお袋に『全身金縛り術』をかけてやる」

登場・言及箇所

脚注


  1. 『ハリー・ポッターと賢者の石』第16章「仕掛けられた罠」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第28章「プリンスの逃亡」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第36章「誤算」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  4. ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「『呪いのかけ方、解き方』」 ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第28章「スネイプの最悪の記憶」 ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第35章「ベールの彼方に」 ↩︎ ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第7章「ナメクジ・クラブ」 ↩︎

  8. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第26章「洞窟」 ↩︎

  9. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第27章「稲妻に撃たれた塔」 ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第29章「不死鳥の嘆き」 ↩︎

  11. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第9章「隠れ家」 ↩︎

  12. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第31章「ホグワーツの戦い」 ↩︎

  13. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第32章「ニワトコの杖」 ↩︎

  14. 『ハリー・ポッターと賢者の石』第17章「二つの顔をもつ男」 ↩︎

  15. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第8章「結婚式」 ↩︎