車内販売のカート
車内販売のカート (trolley) は、ホグワーツ特急の車内を回るお菓子売りのカートです。昼どきになると、丸っこい魔女がカートを押してコンパートメントの戸を開け、「車内販売よ。何かいりませんか?」と声をかけます[1]。ハリー・ポッターが魔法界のお菓子に初めて出会ったのも、このカートの前でした。
概要
カートを押しているのは、えくぼのある丸っこい魔女です[1:2][3:1]。ホグワーツ特急はいつも生徒のために貸切になっており、この魔女以外に車中で大人を見かけることはありませんでした[3:2]。
カートが回ってくるのは、12時半ごろ[1:3]や1時[3:3]といった昼どきです。売っているのはマグルのチョコ・バーではなく、蛙チョコレートやかぼちゃパイといった魔法界のお菓子です[1:4]。ハリーがこのカートで一度に払った額は、銀貨11シックルと銅貨7クヌートでした[1:5]。
カートの呼び名: 原作日本語版では「カート」のほか、『アズカバンの囚人』では「ワゴン」とも訳されています。『呪いの子』日本語版では「台車」です。この記事では「カート」で統一しました。
売り子の呼び名: 原作7冊では「丸っこい魔女」「えくぼのおばさん」など、名前のない描写で呼ばれます。『呪いの子』では「車内販売魔女」という役名が付いています。
作中での使用
ハリーの初めての旅
ハリーが初めてホグワーツ特急に乗った日、12時半ごろに通路でガチャガチャと大きな音がして、えくぼのおばさんがニコニコ顔でコンパートメントの戸を開けました[1:6]。朝食を食べていなかったハリーは、ポケットに入った金貨や銀貨を握って通路に出ます。
ダーズリー家では甘い物を買うお金なんか持ったことがなかった。でもいまはポケットの中で金貨や銀貨がジャラジャラ鳴っている。持ちきれないほどのマーズ・バー・チョコレートが買える……でも、チョコ・バーは売っていなかった。そのかわり、バーティー・ボッツの百味ビーンズだの、ドルーブルの風船ガムだの、蛙チョコレート、かぼちゃパイ、大鍋ケーキ、杖形甘草あめ、それにいままでハリーが一度も見たことがないような不思議な物がたくさんあった。一つも買いそこねたくない、とばかりにハリーはどれも少しずつ買って、おばさんに銀貨十一シックルと銅貨七クヌートを払った。
両腕いっぱいの買い物を座席に置いたハリーは、嫌いなコンビーフのサンドイッチしか持っていなかったロン・ウィーズリーに、かぼちゃパイを差し出しています[1:7]。
翌年、ハリーとロンは9と3/4番線に入れず、空飛ぶ車でホグワーツへ向かうことになります。ヌガーで喉がカラカラになった車の中で、ハリーはずっと下を走っている汽車を懐かしく思い出しました。丸まっちい魔女のおばさんが押してくるカートには、ひんやりと冷たいかぼちゃジュースがあるはずだったからです[2:2]。
眠るルーピン先生のコンパートメント
3年目の旅では、ハリーたちのコンパートメントにルーピン先生が眠っていました。1時になって丸っこい魔女がカートを押してくると、ロンは先生を起こすべきか迷い、ハーマイオニーが声をかけても先生は身じろぎもしませんでした。魔女は「大丈夫よ、嬢ちゃん」と言って大きな魔女鍋スポンジケーキをひと山ハリーに渡し、「目を覚ました時、お腹がすいているようなら、わたしは一番前の運転士のところにいますからね」と言い残してコンパートメントの引き戸を閉めました[3:4]。
同じ年の帰りの列車では、いつもの魔女がワゴンを引いてくると、ハリーは盛り沢山のランチを買い込みました。ただし、いっさいチョコレート抜きでした[5]。
その後の旅
カートはその後の旅にも変わらず回ってきます。4年目の行きの列車では、雨で窓が曇るなか昼食のカートが通路をガタゴトとやってきて、ハリーはみんなで分けるように大鍋ケーキをたっぷりひと山買いました[6]。帰りの列車では、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が、ランチのカートが回ってくるまでダンブルドアの対策について話し続けています[7]。
5年目の行きの列車では、ロンとハーマイオニーが1時間近くコンパートメントに戻らず、車内販売のカートは通り過ぎてしまいました。ハリー、ジニー、ネビルはかぼちゃパイを食べ終えて、蛙チョコのカード交換に夢中になっていました[8]。帰りの列車では、ロンが「ところでハリー、何か買うんなら、ちょうど車内販売のカートが来てるけど……」とハリーに知らせています[9]。
6年目の行きの列車では、ロンが「ランチのカート、早く来てくれないかなあ。腹ペコだ」と待ちわびました[10]。通路はランチ・カートを待つ生徒でいっぱいでした[10:1]。同じ列車でスラグホーン先生は自分でランチを用意しており、その理由をこう語っています[10:2]。
「みんなと多少知り合えるいい機会だ。さあ、ナプキンを取ってくれ。わたしは自分でランチを準備してきたのだよ。記憶によれば、ランチ・カートは杖型甘草飴がどっさりで、年寄りの消化器官にはちときつい……ベルビィ、雉肉はどうかな?」
ダンブルドアの葬儀
ダンブルドアの葬儀には、ハリーが顔だけは知っている人たちも参列していました。ホッグズ・ヘッドのバーテンと並んで、ホグワーツ特急で車内販売のカートを押している魔女もその一人でした[11]。
アルバスの時代
『呪いの子』では、アルバス・セブルス・ポッターがホグワーツ特急に乗る場面にも、車内販売魔女が台車を押して現れ、「何か要りませんか? かぼちゃパイ? 蛙チョコレート? 大鍋ケーキはいかが?」と声をかけます[4:1]。
のちにアルバスとスコーピウス・マルフォイが走行中の列車の屋根の上に出たときも、車内販売魔女は平気で台車を押しながら二人に近づいてきました[12]。魔女は、誰も自分のことをよく知らず、自分の名前も忘れてしまったと語ります。ホグワーツ特急ができたとき、オッタリン・ギャンボルから直々にこの仕事をもらったといい、スコーピウスはそれが190年前であることに気づきます[12:1]。
車内販売魔女 この両手は、600万個以上のかぼちゃパイを作った。かなりうまくなった。しかし、かぼちゃパイが簡単にほかのものに変わることには、誰も気が付かなかった……
魔女はかぼちゃパイを手榴弾のように放り投げて爆発させ、指をみるみる伸ばして鋭く尖った釘状に変え、目的地に着く前に誰かを汽車から降ろしたことは一度もないと宣言します。シリウス・ブラックとその仲間や、フレッドとジョージ・ウィーズリーも降りようとして全員失敗したといいます[12:2]。二人が姿を消したあとの会議では、ハーマイオニーが、車内販売魔女はオッタリン・ギャンボルの期待を裏切ったと繰り返してかんかんに怒っており、ホグワーツに生徒を届けた記録を誇りにしていると伝えています[13]。
オッタリン・ギャンボル: 『呪いの子』日本語版では「オッタライン・ギャンボル」と表記されています。この記事ではポッターモア日本語版(「ホグワーツ特急」「魔法省」の記事)の表記に合わせて「オッタリン・ギャンボル」としました。
登場・言及箇所
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』
- 第6章「9と3/4番線からの旅」
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- 第5章「暴れ柳」
- 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
- 第5章「吸魂鬼」
- 第22章「再びふくろう便」
- 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
- 第11章「ホグワーツ特急に乗って」
- 第37章「始まり」
- 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- 第10章「ルーナ・ラブグッド」
- 第38章「二度目の戦いへ」
- 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- 第7章「ナメクジ・クラブ」
- 第30章「白い墓」
- 『ハリー・ポッターと呪いの子』
- 第1幕第3場・第10場・第11場・第17場