リドルの日記

リドルの日記 (T. M. Riddle's diary) は、トム・リドル、のちのヴォルデモートが16歳のときに、自分自身をその中に保存した日記帳です[1]。白紙のページに書き込むと日記が返事を書き、読み手を五十年前のホグワーツの記憶へ引き込みます[2]。ヴォルデモートの分霊箱の一つであり[3]ルシウス・マルフォイの手でジニー・ウィーズリーに渡されて秘密の部屋を再び開かせ[4]、最後はハリー・ポッターバジリスクの牙で破壊しました[1:1]

基本情報

名前: リドルの日記 (T. M. Riddle's diary)
製作者: ヴォルデモート(トム・リドル、16歳のとき)[1:2][4:1]
外見: 小さな黒い日記帳。表紙の年号は消えかけているが、五十年前の物とわかる。裏表紙にロンドンのボグゾール通りの新聞・雑誌店の名前[2:1][1:3]
所有者: ヴォルデモートルシウス・マルフォイジニー・ウィーズリーハリー・ポッター[4:2][3:1]
分霊箱: ヴォルデモートの分霊箱の一つ[3:2]
破壊: ハリー・ポッターがバジリスクの牙を突き立てて破壊(秘密の部屋にて)[1:4]

外見

小さな黒い日記帳で、ハリーが嘆きのマートルのトイレで拾ったときは水浸しになっていました[2:2][1:5]。表紙の文字は消えかけていますが五十年前の物とわかり、最初のページにはインクの滲んだ「T・M・リドル」の名が読み取れます[2:3]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第13章「重大秘密の日記」

それは日記だった。ハリーには一目でわかった。表紙の文字は消えかけているが、五十年前の物だとわかる。ハリーはすぐに開けてみた。最初のページに名前がやっと読み取れる。

裏表紙には、ロンドンのボグゾール通りにある新聞・雑誌店の名前が印刷されています。マグルの店で買われた日記だったことから、ハリーは持ち主がマグル出身に違いないと考えました[2:4]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第13章「重大秘密の日記」

「この人、マグル出身に違いない。ボグゾール通りで日記を買ってるんだから……」ハリーは考え深げに言った。

魔法的性質

ページはすべて白紙で、ハーマイオニーが「アパレシウム」の呪文を試しても何も現れませんでした[2:5]。ところがハリーが羽根ペンで文字を書き込むと、インクはページに吸い込まれて消え、代わりに書いてもいない文字が浮かび出てきました[2:6]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第13章「重大秘密の日記」

「こんにちは、ハリー・ポッター。僕はトム・リドルです。君はこの日記をどんなふうにして見つけたのですか」

日記は、五十年前にホグワーツで実際に起きた出来事――ハグリッドが秘密の部屋を開けたとして退学処分になった経緯――の記憶の中へ、ハリーを引き込みました[2:7]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第13章「重大秘密の日記」

日記のページがまるで強風に煽られたようにパラパラとめくられ、六月の中ほどのページで止まった。六月十三日と書かれた小さな枠が、小型テレビの画面のようなものに変わっていた。ハリーはポカンと口を開けて見とれた。少し震える手で本を取り上げ、ハリーが小さな画面に目を押しつけると、何がなんだかわからないうちに、体がぐーっと前のめりになり、画面が大きくなり、体がベッドを離れ、ページの小窓から真っ逆さまに投げ入れられる感じがした――色と陰の渦巻く中へ――。

日記に宿っていたのは、リドル自身の言葉によれば「日記の中に、五十年間残されていた記憶」です[1:6]。ジニーが何ヵ月も日記に悩みを書き綴り、リドルが辛抱強く返事を書き続けたことで、ジニーの命は日記の中のリドルへ注ぎ込まれ、リドルはついに日記を抜け出すまでになりました[1:7]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第17章「スリザリンの継承者」

「そこで僕は、ジニーに自分の遺書を壁に書かせ、ここに下りてきて待つように仕向けた。ジニーは泣いたり喚いたりして、とても退屈だったよ。しかし、この子の命はもうあまり残されてはいない。あまりにも日記に注ぎ込んでしまった。つまりこの僕に。僕は、おかげでついに日記を抜け出すまでになった。僕とジニーとで、君が現れるのをここで待っていた。君が来ることはわかっていたよ。ハリー・ポッター、僕は君にいろいろ聞きたいことがある」

のちにダンブルドアは、単なる記憶が自分で考えて行動し、少女の命を搾り取ることはありえないとして、この日記が分霊箱だったと結論づけています[3:3]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第23章「ホークラックス」

「されば、日記から現れたリドルをわしは見ておらぬが、きみが説明してくれた現象は、わしが一度も目撃したことのないものじゃった。単なる記憶が行動を起こし、自分で考えるとは? 単なる記憶が、手中にした少女の命を搾り取るであろうか? ありえぬ。あの本の中には、何かもっと邪悪なものが棲みついておったのじゃ……魂の欠けらが。わしはほぼ確信した。日記は分霊箱じゃった。しかし、これで一つの答えを得たものの、より多くの疑問が起こった。わしがもっとも関心を持ち、また驚愕したのは、あの日記が護りの道具としてだけではなく、武器として意図されていたことじゃった」

歴史

製作

リドルは、在学中に秘密の部屋を再び開けるのは危険だと判断し、代わりに日記を残して16歳の自分をその中に保存しました。いつか誰かに自分の足跡を追わせ、サラザール・スリザリンの仕事を成し遂げさせるためです[1:8]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第17章「スリザリンの継承者」

「僕の在学中に『秘密の部屋』を再び開けるのは危険だと、僕にはわかっていた。しかし、探索に費した長い年月をむだにするつもりはない。日記を残して、十六歳の自分をその中に保存しようと決心した。いつか、時が巡ってくれば、誰かに僕の足跡を追わせて、サラザール・スリザリンの、崇高な仕事を成し遂げることができるだろうと」

ルシウス・マルフォイからジニーへ

日記は、ルシウス・マルフォイの手からジニー・ウィーズリーに渡りました。フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で、ルシウスはジニーの古い『変身術』の教科書を拾い上げ、その中に日記を滑り込ませたのです[4:3]。ホグワーツへ向かう日の朝、隠れ穴を出た車がやっと高速道路にたどり着くころ、ジニーは日記を忘れたと金切り声をあげて車を引き返させており、この時点で日記はすでにジニーの手元にありました[5]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第18章「ドビーのごほうび」

「フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で。ジニーの古い『変身術』の教科書を拾い上げて、その中に日記を滑り込ませた。そうでしょう?」

ジニーと秘密の部屋

ジニーは一年生のあいだ、何ヵ月も日記に悩みを書き続け、リドルはそれに返事を書き続けました[1:9]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第17章「スリザリンの継承者」

「あの日記は、僕の日記だ。ジニーのおチビさんは何ヵ月もの間、その日記にバカバカしい心配事や悩みを書き続けた。兄さんたちがからかう、お下がりの本やローブで学校に行かなきゃならない、それに――」リドルの目がキラッと光った。

やがて日記を疑いはじめたジニーは、それを捨てようとしました[1:10]。トイレに流したものの、日記は新品同様の姿で戻ってきています[6]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第6章「パジャマ姿の屋根裏お化け」

「そして、日記帳が完全に破壊されたとき、その中に閉じ込められていた魂の一部は、もはや存在できなくなったの。ジニーはあなたより先に日記帳を処分しようとしてトイレに流したけど、当然、日記帳は新品同様で戻ってきたわ」

嘆きのマートルのトイレが水浸しになった日、ハリーとロンは床に落ちていた日記を見つけました[2:8]。ハリーが持ち歩いていた日記をドラコ・マルフォイが取り上げようとしたときは、ハリーが「エクスペリアームス! 武器よ去れ!」と唱えて取り返しています[2:9]。その夜、ハリーは日記に書き込んで、リドルの記憶の中へ引き込まれました[2:10]

その後、ハリーの寝室の荷物が荒らされ、日記がなくなりました。ハリーは、日記の新しい持ち主が朝食の席に居並ぶグリフィンドール生の中にいるのではないかと疑っています[7]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第14章「コーネリウス・ファッジ」

ハリーは、朝食の席にびっしり並んで座っている、グリフィンドール生をぐるりと見渡した――もしかしたらハリーの目の前にリドルの日記の新しい持ち主がいるかもしれない――。

日記を取り戻したのはジニーでした。リドルはジニーに自分の遺書を壁に書かせ、秘密の部屋へ下りて待つように仕向けています[1:11]

破壊

秘密の部屋で、リドルは自分が「日記の中に、五十年間残されていた記憶」だと明かしました[1:12]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第17章「スリザリンの継承者」

「記憶だよ」リドルが静かに言った。「日記の中に、五十年間残されていた記憶だ」

バジリスクとの戦いのあと、フォークスがハリーの膝に日記を落としました。ハリーはそばに落ちていたバジリスクの牙をつかみ、日記帳の真芯に突き立てます[1:13]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第17章「スリザリンの継承者」

そして、何も考えず、ためらいもせず、まるで初めからそうするつもりだったかのように、ハリーはそばに落ちていたバジリスクの牙をつかみ、日記帳の真芯にズブリと突き立てた。(中略)日記帳からインクが激流のようにほとばしり、ハリーの手の上を流れ、床を浸した。リドルは身を捩り、悶え、悲鳴をあげながらのたうち回って……消えた。

バジリスクの猛毒は日記帳の真ん中を貫き、焼け爛れた穴を残しました[1:14]。校長室でダンブルドアは、焼け焦げてぶよぶよになったページを熱心に眺め回しています[4:4]

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第18章「ドビーのごほうび」

ダンブルドアはハリーの手から日記を取り、長い折れ曲がった鼻の上から日記を見下ろし、焼け焦げて、ぶよぶよになったページを熱心に眺め回した。

ハリーはこの場で、日記をジニーに与えたのはルシウス・マルフォイだと面と向かって告げています[4:5]

破壊のあと

ヴォルデモートは、ルシウス・マルフォイの口から真実を吐かせるまで、日記が破壊されたことに気づいていませんでした。それを知ったときの怒りは見るも恐ろしいほどだったと、ダンブルドアは聞き及んでいます[3:4]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第23章「ホークラックス」

たとえば、ルシウス・マルフォイの口から真実を吐かせるまで、あの者は日記が破壊されてしまったことに気づかなんだ。日記がずたずたになり、そのすべての力を失ったと知ったとき、ヴォルデモートの怒りたるや、見るも恐ろしいほどじゃったと聞き及ぶ

日記が完全に破壊されたことで、その中に閉じ込められていた魂の一部はもはや存在できなくなりました[6:1]。分霊箱を探す旅の途中、ハリーは無傷のロケットを手にして、日記帳がどれほどずたずたの残骸になったかを思い出しています[8]。ロケットを破壊する直前には、日記の中のリドルのかけらが自分を殺そうとしたことを引き合いに出して、ロンに警告しました[9]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第19章「銀色の牝鹿」

「そして君が刺すんだ。一気にだよ、いいね? 中にいるものが何であれ、歯向かってくるからね。日記の中のリドルのかけらも、僕を殺そうとしたんだ」

ヴォルデモート自身は、日記帳が破壊されたときには何も感じていません。感じるべき肉体を持たない、ゴースト以下の存在だったからだと、彼は考えていました[10]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第27章「最後の隠し場所」

たしかに、日記帳が破壊されたときには感じなかった。しかしあれは、感じるべき肉体を持たず、ゴースト以下の存在だったからだ……いや、間違いない。ほかの物は安全だ……ほかの分霊箱は手つかずだ……。

ハリーが蘇りの石で呼び出した人々の姿は、ゴーストとも本当の肉体とも違い、ずいぶん昔に日記から抜け出したリドルの姿に最も近い、記憶がほとんど実体になった姿として描かれています[11]

『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」

ゴーストとも違う、かといって本当の肉体を持ってもいない、ということがハリーにはわかった。ずいぶん昔のことになるが、日記から抜け出したあのリドルの姿に最も近く、記憶がほとんど実体になった姿だった。生身の体ほどではないが、しかしゴーストよりずっとしっかりした姿が、それぞれの顔に愛情のこもった微笑を浮かべて、ハリーに近づいてきた。

登場・言及箇所

脚注


  1. 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第17章「スリザリンの継承者」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第13章「重大秘密の日記」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第23章「ホークラックス」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第18章「ドビーのごほうび」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第5章「暴れ柳」 ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第6章「パジャマ姿の屋根裏お化け」 ↩︎ ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』第14章「コーネリウス・ファッジ」 ↩︎

  8. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第14章「盗っ人」 ↩︎

  9. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第19章「銀色の牝鹿」 ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第27章「最後の隠し場所」 ↩︎

  11. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第34章「再び森へ」 ↩︎