銀の道具類
銀の道具類 (Dumbledore's silver instruments) は、ホグワーツの校長室で、紡錘形の華奢な脚がついたテーブルの上に立ち並び、くるくる回りながら小さな煙を吐いている道具の一群です[1]。アルバス・ダンブルドアが校長を務めていた時代の校長室を特徴づける調度で、その用途はほとんど語られません[2]。
概要
校長室は広くて美しい円形の部屋で、おかしな小さな物音に満ちています。その音の源が、テーブルの上で回り続ける銀の道具類です[1:3]。
そこは広くて美しい円形の部屋で、おかしな小さな物音で満ち溢れていた。紡錘形の華奢な脚がついたテーブルの上には、奇妙な銀の道具が立ち並び、くるくる回りながらポッポッと小さな煙を吐いている。壁には歴代の校長先生の写真が掛かっていたが、額縁の中でみんなすやすや眠っていた。大きな鉤爪脚の机もあり、その後ろの棚には、みすぼらしいボロボロの三角帽子が載っている――「組分け帽子」だ。
一つひとつの道具が何をするものなのかは、作中でほとんど明かされません。ハリーは校長室を訪れるたびにこれらを目にしますが、ダンブルドアが目の前で使ってみせた一つについてさえ、その働きを聞くことはできませんでした[2:1]。
道具の呼び方: 原作日本語版では、同じ道具類が章によって「銀の道具類」(『秘密の部屋』第12章、『不死鳥の騎士団』第22章・第37章、『謎のプリンス』第10章)、「銀の計器類」(『不死鳥の騎士団』第27章)、「銀の小道具類」(『謎のプリンス』第29章)、「銀の仕掛け装置」(『秘密の部屋』第13章)と訳し分けられています。この記事の見出しには「銀の道具類」を採り、引用はそれぞれの章の表記のままにしています。
作中での使用
ハリーが初めて見た校長室
ハリーが初めて校長室に入ったのは、マクゴナガル先生に連れられて石の螺旋階段を上ったときです。ハリーはこの円形の部屋で、回り続ける銀の道具類、眠る歴代校長の肖像画、そして組分け帽子を目にしました[1:4]。
五十年前の校長室
リドルの日記に引き込まれたハリーが見た五十年前の校長室には、不死鳥のフォークスも、くるくる回る銀の仕掛け装置もありませんでした。ハリーはそこから、この部屋の主がダンブルドアではなく見知らぬ魔法使いであることを読み取っています[5]。
ハリーは部屋を見回した。不死鳥のフォークスもいない。くるくる回る銀の仕掛け装置もない。これはリドルの記憶の中のホグワーツだ。つまりダンブルドアではなく、この見知らぬ魔法使いが校長なんだ。そして自分はせいぜい幻みたいな存在で、五十年前の人たちにはまったく見えないのだ。
煙の蛇
ハリーがアーサー・ウィーズリーの襲われる光景を見た夜、ダンブルドアは銀の道具の一つを机に運び、杖の先でそっと叩きました。ハリーには、その道具が何をするものなのかまったくわかりませんでした[2:2]。道具は煙の蛇を吐き、ダンブルドアが「しかし、本質的に分離しておるか?」と独り言のように問いかけると、蛇はたちまち二つに裂けました[2:3]。
道具はすぐさまひとりでに動き出し、リズムに乗ってチリンチリンと鳴った。てっぺんにあるごく小さな銀の管から、薄緑色の小さな煙がポッポッと上がった。ダンブルドアは眉根を寄せて、煙をじっと観察した。数秒後、ポッポッという煙は連続的な流れになり、濃い煙が渦を巻いて昇った……蛇の頭がその先から現れ、口をかっと開いた。(中略)「しかし、本質的に分離しておるか?」(中略)ハリーはこれがどういう意味なのか、ちんぷんかんぷんだった。しかし、煙の蛇はたちまち二つに裂け、二匹とも暗い空中にくねくねと立ち昇った。ダンブルドアは厳しい表情に満足の色を浮かべて、道具をもう一度杖でそっと叩いた。チリンチリンという音が緩やかになり、鳴りやんだ。煙の蛇はぼやけ、形のない霞となって消え去った。
ダンブルドアは道具を元の細いテーブルに戻しました。ハリーはこの道具が何をするものかと聞こうとしましたが、その前に肖像画のエバラードが戻ってきたため、答えを得ていません[2:4]。
魔法省一行との乱闘
ファッジ、アンブリッジらとの対決で、ダンブルドアは乱闘の末に校長室から脱出しました。埃が収まったあとの校長室では、机がひっくり返り、華奢なテーブルはすべて床に倒れ、上に載っていた銀の計器類は粉々になっていました[3:1]。
埃が収まってきた。破壊された部屋がだんだん見えてきた。ダンブルドアの机はひっくり返り、華奢なテーブルは全部床に倒れて、上に載っていた銀の計器類は粉々になっていた。
校長が留守にしている間に、校長室はすべてひとりでに修復されました。次にハリーが校長室に降り立ったとき、その目には華奢な脚のテーブルの上でのどかに回りながら煙を吐く銀の道具類が映りました[4:2]。
校長が留守の間に、すべてがひとりでに元どおり修復されたようだった。繊細な銀の道具類は、華奢な脚のテーブルの上で、のどかに回りながらポッポッと煙を吐いている。
シリウスの死の夜
シリウス・ブラックの死を知った直後、怒りに我を忘れたハリーは、脇のテーブルにあった繊細な銀の道具をひっつかんで部屋の向こうに投げつけ、粉々に砕きました。続けてハリーは、その道具が載っていたテーブルも投げつけています[4:3]。
ハリーは吠え哮り、脇の華奢な脚のテーブルから繊細な銀の道具をひっつかみ、部屋の向こうに投げつけた。道具は壁に当たり、粉々に砕けた。肖像画の何人かが、怒りや恐怖に叫び、アーマンド・ディペットの肖像画が声を上げた。
マールヴォロ・ゴーントの指輪
ハリーがダンブルドアの個人教授を受けるために校長室を訪れたとき、円形の部屋はいつもと変わりなく、繊細な銀の道具類が細い脚のテーブルの上で煙を上げたり渦巻いたりしていました[6]。その教授が終わって部屋を出ようとしたとき、ハリーは、銀の器具がたくさん載った細い脚のテーブルの一つに、黒い石の割れた醜い金の指輪――マールヴォロ・ゴーントの指輪――が置かれているのを見つけます[6:1]。
壊れやすそうな銀の器具がたくさん載った細い脚のテーブルの一つに、醜い大きな金の指輪があった。指輪に嵌まった黒い大きな石が割れている。
ダンブルドアの死後
ダンブルドアが亡くなった数時間後、マクゴナガル先生とハリーが校長室に入ると、部屋は出発したときとほとんど変わっておらず、銀の小道具類は華奢な脚のテーブルの上でくるくる回り、煙を上げていました。変わっていたのは、空になったフォークスの止まり木と、歴代校長の肖像画に加わった新しい一枚でした[7]。
しかし、その部屋は、ほんの数時間前、ハリーとダンブルドアが出発したときとほとんど変わっていないように見えた。銀の小道具類は、華奢な脚のテーブルの上でくるくる回り、ポッポッと煙を上げていたし、グリフィンドールの剣はガラスのケースの中で月光を受けて輝き、組分け帽子は机の後ろの棚に載っていた。しかし、フォークスの止まり木は空っぽだった。
登場・言及箇所
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- 第12章「ポリジュース薬」
- 第13章「重大秘密の日記」
- 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- 第22章「聖マンゴ魔法疾患傷害病院」
- 第27章「ケンタウルスと密告者」
- 第37章「失われた予言」
- 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- 第10章「ゴーントの家」
- 第29章「不死鳥の嘆き」