マールヴォロ・ゴーントの指輪
マールヴォロ・ゴーントの指輪 (Marvolo Gaunt's ring) は、ゴーント家に何世紀も伝わった黒い石つきの金の指輪です[1]。ヴォルデモートが伯父モーフィン・ゴーントから奪い[2]、分霊箱にして先祖の小屋に隠しました[3]。アルバス・ダンブルドアがこれを見つけ出して破壊しましたが、指輪にかけられていた呪いのために片手が黒く萎えてしまいました[3:1][4]。石に刻まれていた印は、のちに死の秘宝の印だとわかりました[5]。
概要
マールヴォロ・ゴーントの指輪は、ヴォルデモートの祖父マールヴォロ・ゴーント[5:2]の一族に伝わった品です[1:3]。ハリーが憂いの篩で見たボブ・オグデンの記憶の中で、マールヴォロ・ゴーントは中指にはめたこの指輪をオグデンの目の前で振って見せています[1:4]。
一瞬、ハリーは、ゴーントが指を突き立てて卑猥な手つきをするのかと思った。しかしそうではなく、中指にはめている黒い石つき醜悪な指輪を、オグデンの目の前で振って見せただけだった。
マールヴォロは、この指輪が何世紀も一族の物であったこと、それが純血の家系の古さの証であること、そして石にペベレル家の紋章が刻まれていることを自慢しました[1:5]。しかし、彼が紋章と呼んだ石の刻印は、実際には死の秘宝の印でした。ゴーント家がペベレル家の子孫だとする言葉と、指輪の石の引っかき傷とを結びつけたのは、のちにハリー・ポッターです[5:3]。
「あの指輪。分霊箱になったあの指輪だ。マールヴォロ・ゴーントが、ペベレルの紋章がついていると言ってた! 魔法省の役人の前で、ゴーントがそれを振って見せていた。ほとんど鼻の穴に突っ込みそうだった!」
ハリーは、マールヴォロ自身は指輪が本当は何なのかを知らなかったのではないかと考えています。純血であることだけを大切にしていた老人にとって、石の引っかき傷は紋章でなければならなかったからです[5:4]。石そのものについては蘇りの石の記事に譲ります。
歴史
ゴーント家の家宝
オグデンの記憶の時点で、指輪はマールヴォロ・ゴーントの中指にありました[1:6]。マールヴォロの息子モーフィンは、のちにこの指輪を右手にはめています。若いトム・リドルがゴーントの家を訪ねたとき、モーフィンがマールヴォロの黒い石の指輪をはめているのをハリーは見ています[2:1]。
ヴォルデモートの手に
ヴォルデモートは、マグルの父トム・リドルとその両親を殺害したあと、ゴーントの小屋へ戻り、伯父モーフィンに偽の記憶を植えつけたうえで指輪を持ち去りました[2:2]。
「そのとおりじゃ」ダンブルドアが言った。「それを示す記憶はない。しかし、何が起こったかについては、かなり確信を持って言えるじゃろう。ヴォルデモートはおじに失神の呪文をかけて杖を奪い、谷を越えて『向こうのでっかい屋敷』に行ったのであろう。そこで魔女の母親を捨てたマグルの男を殺し、ついでにマグルである自分の祖父母をも殺した。自分にふさわしくないリドルの家系の最後の人々をこのようにして抹殺すると同時に、自分を望むことがなかった父親に復讐した。それからゴーントのあばら家に戻り、複雑な魔法でおじに偽の記憶を植えつけた後、気を失っているモーフィンのそばに杖を返し、おじがはめていた古い指輪をポケットに入れてその場を去った」
殺人の罪を自白したモーフィンは抗いもせずにアズカバンへ引かれていきましたが、「父親の指輪がなくなっていたことだけを気にしておった」とダンブルドアは語っています。モーフィンは、マールヴォロの最後の世襲財産をなくしたことを嘆きながらアズカバンで生涯を終えました[2:3]。
その後、指輪はしばらくヴォルデモートの手にありました。ホグワーツの生徒だったトム・リドルが、スラグホーンの部屋で男の子たちとともに座っている記憶の中で、リドルは右手にマールヴォロの金と黒の指輪をはめています。それは父親を殺したあとのことでした[2:4][3:3]。
ヴォルデモートは、やがてこの指輪に自分の魂の一部を封じて分霊箱にしました。分霊箱にしたあとは身につけるのをやめ、先祖の住んでいた小屋に、幾重にも強力な魔術で護って隠しています[3:4]。
「そうじゃのう。もうきみにもわかったじゃろうが、わしは長年、ヴォルデモートの過去をできるだけ詳らかにすることを責務としてきた。ヴォルデモートがかつて知っておった場所を訪ねて、わしはあちこちを旅した。たまたま廃屋になったゴーントの家に、指輪が隠してあったのを見つけたのじゃ。その中に魂の一部を首尾よく封じ込めたあとは、ヴォルデモートはもう指輪をはめたくなかったのじゃな。先祖がかつて住んでいた小屋に指輪を隠し、幾重にも強力な魔術を施して指輪を護った――もちろん、モーフィンはすでにアズカバンに連れ去られておった――いつの日か、わしがわざわざその廃屋を訪ねるだろうとは、またわしが魔法による秘匿の跡に目を光らせるだろうとは、夢にも思わなかったことじゃろう」
ダンブルドアによる発見と破壊
ダンブルドアは、ヴォルデモートがかつて知っていた場所を訪ね歩くうちに、廃屋となったゴーントの家に隠されていたこの指輪を見つけました[3:5]。それは、ダーズリー家からハリーを迎えに行く数日前のことで、ダンブルドアが手に怪我をした時期と重なります[1:7]。
『死の秘宝』の章「キングズ・クロス」で、ダンブルドアはこのときのことをハリーに告白しています。廃屋に埋められていた石は、彼が死の秘宝のなかでもいちばん強く求めていたものでした。それを見て正気を失い、すでに分霊箱になっていることも、指輪に呪いがかかっているに違いないことも忘れて、指輪を取り上げてはめてしまったのです。一瞬、アリアナや母、父に会えると思ったと、ダンブルドアは語っています[6]。
呪いを受けて著しく傷ついたダンブルドアはホグワーツに戻り、セブルス・スネイプの処置を受けました。スネイプの記憶の中で、その夜の校長室の机には割れた指輪が載っており、その脇にグリフィンドールの剣が置かれていました[4:2]。スネイプは、なぜ呪いのかかった指輪をはめたのかと問い詰めています。呪いは片方の手に封じ込めるのが精一杯で、スネイプは、ダンブルドアの余命をおそらく一年と告げました[4:3]。
「指輪を割れば、呪いも破れると思ったのですか?」
これに対してダンブルドアは「そんなようなものじゃ……わしは熱に浮かされておったのじゃ、まぎれもなく……」と答えています[4:4]。
ハリーがこの指輪を実物として初めて目にしたのは、オグデンの記憶を見た夜の校長室でした。細い脚のテーブルの上に、黒い大きな石が割れた醜い大きな金の指輪が置かれていたのです[1:8]。
ハリーは、再び踵を返した。そしてドアのところまで来たとき、ハリーはある物を見た。壊れやすそうな銀の器具がたくさん載った細い脚のテーブルの一つに、醜い大きな金の指輪があった。指輪に嵌まった黒い大きな石が割れている。
ハリーは、スラグホーンを訪ねた夜にダンブルドアがこの指輪をはめていたことと、それがオグデンの記憶の指輪と同じものであることを確かめましたが、ダンブルドアは入手の経緯を「別の機会に話して聞かせよう」と言って、その夜は語りませんでした[1:9]。次にハリーが校長室を訪れたとき、指輪は小さなテーブルから消えていました[7]。
ダンブルドアが指輪の正体を明かしたのは、ヴォルデモートの分霊箱についてハリーに講義した夜のことです。黒く焼け焦げたような手を挙げて、ダンブルドアはこう語りました[3:6]。
「指輪じゃよ、ハリー。マールヴォロの指輪じゃ。それにも恐ろしい呪いがかけられておった。わしの並外れた術と――謙譲という美徳に欠ける言い方を許しておくれ――さらに、著しく傷ついてホグワーツに戻ったときのスネイプ先生のすばやい処置がなければ、わしは生きてこの話をすることができなかったことじゃろう。しかし、片手が萎えようとも、ヴォルデモートの七分の一の魂と引き換えなら、理不尽ではなかろう。指輪はもはや分霊箱ではない」
こうして、リドルの日記に続いて、指輪も分霊箱ではなくなりました[3:7]。
その後
ヴォルデモートは、指輪の隠し場所を長く安全だと信じていました。ハッフルパフのカップが奪われたことを知らされたとき、ヴォルデモートは、ゴーントの小屋に指輪を隠したことまでハリーに知られたのではないかと疑いましたが、自分がゴーントの血筋であることは誰も知らないはずだと考え直しています[8]。
わずかの冷静さが、いま、ヴォルデモートの怒りを鎮めていた。あの小僧が、ゴーントの小屋に指輪が隠してあると知るはずがあろうか? 自分がゴーントの血筋であると知る者は、誰もいない。そのつながりは隠し通してきた。あの当時の殺人についても、この俺様が突き止められることはなかった。あの指輪は、間違いなく安全だ。
それでもヴォルデモートがほかの分霊箱の無事を確かめに行こうとしており、最初に指輪を見に行くつもりであることを、ハリーはその心の中から読み取っています[8:1]。
一方ハリーは、ダンブルドアが指輪を割ったあとにどうしたのかをロンに問われ、ダンブルドアが自分に遺したスニッチの中に石があるのだと気づきました[5:5]。割れた指輪から取り出された石のその後については、蘇りの石の記事を参照してください。
登場・言及箇所
- 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- 第10章「ゴーントの家」
- 第13章「リドルの謎」
- 第17章「ナメクジのろのろの記憶」
- 第23章「ホークラックス」
- 『ハリー・ポッターと死の秘宝』
- 第22章「死の秘宝」
- 第27章「最後の隠し場所」
- 第33章「プリンスの物語」
- 第35章「キングズ・クロス」